2006年3月25日(土)「しんぶん赤旗」

戦犯的体質――日本と欧州の違いは?


 〈問い〉 日本では、第2次世界大戦後、自国の戦争犯罪人が政治の中枢の地位につくようになったのに、なぜヨーロッパではこういうことはおこらなかったのですか?(埼玉・一読者)

 〈答え〉 第2次世界大戦後の世界は、日本、ドイツ、イタリアがおこなった侵略戦争を断罪し、このような戦争を二度と引きおこさない世界をめざすことを、世界政治の共通の原点としました。

 しかし、日本の現実の政治は、この線にそっては展開されず、戦争協力の度合いが強かった指導者たちも、いったんは連合国の占領のもとで、政界から追放されたものの“日本をアメリカのよりよい協力者にするためには、過去の指導者たちを復活させる必要がある”というアメリカの政策転換で、戦後数年にして多くの戦争犯罪人が政界に復活しました。その後、政治の実態では、過去の侵略戦争にたいしてまともな反省をしないまま「戦争肯定」派の人脈が今日まで続いています。

 アメリカはこの時期、世界の資本主義体制を維持・拡大するため、他国、他民族への抑圧と干渉をおこなう外交軍事戦略をすすめ、ヨーロッパでもアメリカの提唱で「ヨーロッパ復興計画」(マーシャル・プラン)が実施されました。これは、ヨーロッパ諸国の戦後復興をはかるとともに、アメリカ主導の軍事同盟結成の経済的基礎をつくることをねらったものでした。

 しかし、戦争犯罪人を政界に復帰させることはヨーロッパでは絶対におこりえないことでした。ドイツでは、国として過去の自国がおこした戦争に対して、侵略戦争だと正直にきちんと認める立場をとり、過去の時代と向き合う国民的討論をすすめてきました。ここが日本との大きな違いです。シュレーダー首相(当時)が戦後60周年にあたって新聞に発表した論文で、「ドイツの国民は、過去の時代と正面からきり結ぶ討論を数十年にわたっておこない、ヒトラー・ドイツが犯した犯罪は、ヒトラーだけのものではなく、ドイツ国民全体がその責任を深く胸に刻み込む必要があるという、共通の集団的な意識に到達した」「この意識を維持し続けることは、ドイツ国民の永続する道徳的な義務である」「この努力がなかったら、ドイツがかつての敵であるフランスと手を取り合って欧州統合をすすむという今日の道が開かれることはなかっただろう」とのべました。

 侵略戦争を正当化する異常な政治を転換させることは、急務の課題です。「反省を言葉だけでなく行動でしめしてこそ、アジアと世界の人々から信頼される日本をきずくことができる」(日本共産党第24回党大会決議)のです。(満)

 〔2006・3・25(土)〕


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