2006年4月5日(水)「しんぶん赤旗」

教科書 特殊指定廃止

生き残り 資金力しだい

他社攻撃も公然化の恐れ


 小泉内閣の「構造改革」「規制緩和」の流れの中で、公正取引委員会は教科書採択にかんする教科書会社の活動を規制した「教科書特殊指定」を廃止する方針を打ち出しました。廃止されれば、出版社は採択関係者に教科書の見本本やパンフレットなどを無制限に配布でき、他社の教科書との比較表も配れるようになりますが、関係者からは「資金力のある大手だけが生き残り、教科書の多様性がなくなる」との声が出ています。(高間史人)


公取委方針

 「特殊指定」は独占禁止法にもとづいて公正取引委員会が指定した分野の取引にかんして特別な規制をおこなうもの。教科書は一九五六年に指定され、採択関係者らへの利益供与と他社が発行する教科書を「中傷・ひぼう」することが禁止されています。

 公取委は、指定当時と比べ現在は採択の透明性が確保されていること、公務員への利益供与はもともと禁じられていることなどを廃止理由に挙げています。廃止によって、現在、各教育委員会に五冊ずつに制限されている見本本の配布が自由にできるようになり、他社との比較をした資料・パンフレットなどを作製して配ることも可能で、教科書の中身による競争ができるとしています。

協会は反対表明

 しかし、教科書出版社でつくる教科書協会は「特殊指定は小さな会社でも教科書を発行できる抑止力としてはたらいてきた。廃止されれば小さな会社が生き残れなくなり、発行される教科書が少なくなる。他社との比較もひぼう・中傷になっていくことが心配される」と廃止反対を表明しています。

 実際、現在でも大手教科書会社による寡占化がすすみ、教科によっては一社の教科書が半分以上の占有率を持ったり、二、三社で八―九割を占めるケースがすくなくありません。特殊指定がなくなれば資金力、宣伝力にまさる大手出版社がますます有利になります。

 また、近年、侵略戦争を正当化する「新しい歴史教科書をつくる会」が他社の教科書を攻撃する宣伝物を広範に配布しています。指定廃止でこうした行為がいっそう公然とやられるおそれがあります。公取委は「事実に基づかない比較は禁じられる」としていますが「事実に基づいている」と主張すればいくらでも他社を攻撃できます。「つくる会」はさっそく「公取委に激励の声を届けよう」とのファクス通信を出し廃止を歓迎しています。

 日本共産党の井上哲士参院議員は三月二十二日の文部科学委員会で、資金が足りないため見本本をすべての教育委員会に送ることができず採択対象からはずされている出版社もあることを指摘し、「特殊指定廃止は教科書のいっそうの寡占化を招くのではないか」とただしました。小坂文科相は「規制が急に廃止され採択関係者に混乱を招かないか懸念されている」と答弁。井上議員は公取委に、広く関係者の意見を聞き性急な決定をしないよう求めました。

8日緊急シンポ

 子どもと教科書全国ネット21は小規模な会社が倒産や発行中止に追い込まれ、少数の大手による「準国定教科書化」が進むとして、特殊指定廃止に反対するアピールを発表。八日午後一時半から東京・千代田区の明治大学(研究棟四階第一会議室)で緊急シンポジウムを開き反対を訴えていくことにしています。


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