2006年4月8日(土)「しんぶん赤旗」
イラク関連情報漏えい 米大統領承認
深まる情報操作疑惑
うそを承知で開戦か
米中央情報局(CIA)工作員実名漏えい事件にかかわるイラク関連情報の漏えいを許可したのはブッシュ大統領自身だった―同事件で起訴されているリビー被告(前副大統領首席補佐官)が証言していました。
同事件を捜査しているフィッツジェラルド特別検察官が、リビー裁判に関して五日に提出した訴訟関連文書で明らかになりました。同文書によればリビー被告は捜査の過程で、二〇〇二年十月のイラクに関する機密情報の「関連部分の公開を承認したのは大統領だと(チェイニー)副大統領が後に助言した」と語っていました。
これは、イラクが核兵器開発のためにウランを入手しようとしていると述べたものです。リビー被告は、「ウラン入手」の情報を否定したウィルソン元大使の政権批判に反論するため、CIA秘密工作員の実名とともに、この情報を特定の記者に流しました。
米紙によれば法律専門家は、機密情報の一部を大統領が公開するのは違法ではないものの、「政府高官がそうした行動を内密にするのは極めて異例だ」と見ています。
この事件で問われている根本問題は、イラクの核兵器開発がうそであることを最初から承知しながら、ブッシュ政権が大々的な情報操作をし、議会と国民をだましてイラク戦争開戦を強行したのではないかという重大な疑惑です。
この情報操作のため、ホワイトハウスに「ホワイトハウス・イラク・グループ」、国防総省に「特別計画室」という組織が特設され、CIAなど本来の情報機関を迂回(うかい)してイラク情報をメディアなどに流す仕組みがつくられました。CIA工作員名の漏えいは、この作業の延長線上で行われました。
リビー被告のほか、ブッシュ氏の側近中の側近であるローブ大統領次席補佐官、三月末に辞任が発表されたカード大統領首席補佐官らが、両組織の運営に当たりました。ライス国務長官やハドリー大統領補佐官(国家安全保障担当)も関与しました。
政権最大の「売り」としてきたイラク戦争で、すでに大きくつまずいているブッシュ政権。今回の暴露が今後、事態の本質の解明にどこまで迫っていくかが注目されています。(坂口明)