2006年4月9日(日)「しんぶん赤旗」
多様な教科書、危機に
特殊指定廃止問題でシンポ
子どもと教科書全国ネット21は八日、公正取引委員会が「教科書特殊指定」を廃止しようとしている問題で緊急シンポジウムを開きました。出版関係者や教師、市民ら五十数人が参加。指定廃止で教科書の内容よりも宣伝力・資金力による競争が激化する問題を話し合いました。「教科書特殊指定」は出版社が採択関係者に物品などを提供したり、他社の教科書を「中傷」することを禁止したもの。廃止すれば大手がいっそう有利になり、小規模な会社の倒産・発行中止につながると反対の声が上がっています。
教科書ネットの俵義文事務局長は、採択制度の改悪が寡占化をもたらし十数社あった国語の教科書がいまは五社に減ったと指摘。「特殊指定が廃止されれば小さな会社は太刀打ちできなくなる。個性豊かな多様な教科書がなくなることは子どもの教育そのものにかかわる問題」と語りました。
琉球大学の高島伸欣教授は、「新しい歴史教科書をつくる会」がほかの教科書をひぼうした文書を配布しても公取委は「『つくる会』は教科書発行者ではないから」として問題にできなかったとのべ、「規制を強化すべきときに規制を廃止しようとしている」と批判しました。
新聞労連の美浦克教委員長は、教科書や新聞の特殊指定廃止は、「規制緩和」が背景にある点で格差拡大と根が一緒だと指摘。全国同一価格を保障した新聞特殊指定が廃止されれば、安売り競争が起きて資本力のある新聞社だけが生き残ることになり、多様な言論が失われるとし、「競争は価格ではなく、紙面の質で行うべきだ」と主張しました。教科書会社の労働者からは競争激化による労働条件切り下げなどの問題が指摘されました。
参加者は公正取引委員会が意見募集をしている今月十七日までに、できるだけ多くの人が意見を出そうと確認しました。