2006年4月17日(月)「しんぶん赤旗」

主張

建築基準法

「安全より効率優先」が問題だ


 政府は耐震強度偽装事件の再発防止策として建築基準法等の改正案をまとめ、国会審議がはじまります。

 危険なマンションをつくった建築士や施工者への罰則の強化、新たに第三者機関が構造計算の適合性を判定する仕組みなどを盛り込みましたが、肝心の建築確認・検査制度は民間まかせのままです。住宅にとって安全こそ最大の価値という立場で、抜本的な対策をとることが必要です。

規制緩和の害悪に反省を

 耐震偽装や強度不足の構造設計が相次いだ背景には、二つの問題があります。第一は検査機関の民間開放などの規制緩和の問題、第二に業界の過剰なコストダウン競争です。

 一九九八年の建築基準法改悪で建築確認・検査の民間開放が導入されたときから、「安かろう悪かろう」の検査が横行することが指摘されていました。営利を目的とする民間の検査会社が公正中立な立場を保持できるとは到底考えられない、談合や過当競争などの問題を引き起こす建築業界の実態では手抜きなどの不安が残る――懸念は残念ながら的中することになりました。

 政府は、今回の事件の後も「民間にできることは民間にという方向が間違っているとは思わない」(小泉首相)と、なんの反省も示していません。これでは、再発防止はもちろん、建築行政にたいする国民の不信をぬぐうことはできません。

 事件についての国土交通相諮問機関の報告書も「一部の検査機関が、営利企業であることから『建築主に好まれる低料金で早く』という経済原理に基づく安易な審査に流れる傾向を招いた」と認めています。建築行政が「安全よりも効率優先」に変質させられたことは深刻です。

 是正には、民間検査機関を非営利の法人とし、検査は地方自治体からの委託でおこない、確認・検査には自治体が責任をもつことを明確にすることが最低限必要です。確認・検査を民間に依存したために、体制が弱体化している自治体の人材育成と確保、技術向上も欠かせません。

 姉歯案件につづいて偽装が発覚した福岡県の設計会社は一件あたり一週間という特異な速さで構造設計をしていました。札幌市の事件では、コスト削減のために納期が最優先され、建築士が作業途中の構造設計書を出したといいます。

 建設業界の「安上がり競争」はそれほどすさまじく、コスト削減のために建築士をデベロッパー(開発業者)の利益に従わせ、なりふりかまわぬやり方で利益を追求しています。政府が九六年にまとめた「住宅コスト低減のための緊急重点計画」=住宅分野の規制緩和が、この風潮を加速したことも重大です。

 建築士の独立性を確保する建築士制度の抜本的改善、市場・民間まかせの住宅政策を是正すること、消費者保護の観点で情報開示と欠陥が発生した場合の補償制度を拡充することなど、緊急にとるべき対策は数多くあります。

安全最優先の基準に

 北側一雄国土交通相は、建築基準法の安全基準は「最低限のもの」とのべています。規制緩和とコストダウン競争のなかで建築物の安全性を軽視し、「経済設計」「限界設計」などと呼ばれる基準法ぎりぎりの設計が常態化していることも問題です。

 すでに自治体レベルで耐震基準を上乗せする例が広がっています。建築基準法の基準そのものを引き上げることが大切です。良質な住宅の確保で国民の生命・財産をまもる立場を建築行政がつらぬくべきです。


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