2006年4月19日(水)「しんぶん赤旗」
主張
「行革」関連法案
公共サービス後退が鮮明に
自民、公明の両与党は「行革推進」法案や「市場化テスト」法案など「行革」関連法案を、衆院行革特別委で十九日に採決しようとしています。
与党と公務員人件費の削減を競う民主党も「採決は仕方がない」(鳩山幹事長)と容認しています。
行革推進法案は国と地方の公務員の大幅削減、中小企業向け政策金融の民営化・統廃合を盛り込んでいます。市場化テスト法案は民間企業と行政に「採算」を競わせるやり方で、公共サービスを丸投げします。
国民向けの公共サービスを切り捨てる重大な内容です。安易な採決は許せません。
標的は生活密着分野
日本共産党の追及や参考人の意見陳述を通じて、行革関連法案がくらしや営業に深刻な影響を与えることがますますはっきりしています。
行革推進法案が標的にしているのは、公務員の中でもより国民生活に密着した分野です。
国家公務員では出先機関を減らします。その一つの労働基準監督官は全国五百七十二万の民間事業所に対してわずか二千八百九十三人。下請け代金の検査官は七十一人です。
人件費と下請け単価の削減で利益率を稼ぐリストラの横行によって、劣悪な労働条件が広がり、中小企業の経営難が続いています。サービス残業や下請けいじめを監視・是正する行政の責任と役割がいっそう重要になっているときに、削減の対象にするのは無責任のきわみです。
国家公務員は約七十万人、地方公務員は三百万人です。公務員削減の影響は地域住民の生活を直接支える地方に一段と重く表れます。地方公務員削減について行革推進法案は、国が定めた配置基準そのものを見直して大なたをふるうことを定めています。対象分野は教育、警察、消防、福祉など二百万人に及びます。
たとえば生活保護のケースワーカーの充足率は国基準の84%、消防士は75%にすぎません。いずれも国民のくらしと安全の最後のセーフティーネットです。教職員については児童・生徒の減少を上回って削り込むとしています。三十人学級など少人数学級は国民的な要求です。
行革推進法案は、国民の願いと時代の流れに逆行する行政の責任放棄というほかありません。
市場化テスト法案には、ビジネスチャンスを狙う業界がアリのように群がっています。年金保険料など公金徴収には、クレジット業界が参入を求めてきました。経産省の研究会で大手クレジット会社が「新マーケット」開拓策として次のように取り上げています。
公金の流通は年間一千兆円に上り、そのうち国民・企業から行政への支払いが百三十兆円、当面のメーンターゲットは「国民年金(約二兆円)、水道料金(約三兆円)、自動車税(二兆円)、行政手数料、交通反則金、関税…」だと。
手数料と高金利で大もうけを上げる算段です。それだけ国民のふところと財政の支出がかさむということであり、まったくの本末転倒です。
徹底審議で廃案に
小泉内閣は、こうした「行革」によって「国民負担の上昇を抑える」と説明しています。しかし必要な公共サービス切り捨ては、そのサービスが支えている社会的に弱い立場に置かれた庶民の負担を増やします。
しかも、政府は「行革」を消費税増税のステップだと位置づけています。負担を抑えるなどという国民をごまかす説明はやめるべきです。
こんな法案は徹底審議の上、廃案にすることを求めます。