2006年5月23日(火)「しんぶん赤旗」
主張
イラク新政権
外国軍は撤退へ見通し示せ
イラクに新政権が発足しました。
マリキ新首相は「国民間の対話と和解」の促進、「イラクの主権、統一と独立」を優先課題にあげています。イラク国民の切実な願いである治安の回復と水道、電気など生活の基本条件を復興することは、緊急の課題です。
同時に新政権が発足したいま、米軍と外国軍の撤退計画を明確にすることが不可欠の課題です。
治安と主権回復の障害
イラクでの「対話と和解」の実現には、昨年十二月の議会選挙から今回の組閣まで五カ月を要した過程に現れているように、大きな困難があります。これだけの時間をかけても国防、内務、治安担当相は決まらず、兼任で出発することになりました。
「自爆」攻撃が続くなど、イラクの情勢は依然として厳しく、マリキ首相もかつて批判したように、米英軍のイラク攻撃が「地獄の門」を開いたという事態が続いています。その中心問題は、米英軍がイラクの主権を侵犯して抵抗を呼び起こすとともに、「テロ」をはびこらせ、諸勢力の対立を引き起こす元凶になっていることです。
それだけに、いかに困難でもイラクの諸勢力が対立を克服し、真に主権を行使できるようにしていくためには、占領外国軍という災いの大本を取り除いてゆく見通しをはっきりさせなければなりません。
ブッシュ米大統領はイラクの新政権発足にあたり、「自由なイラクは対テロ戦争で重要な同盟者であり、テロリストとアルカイダに壊滅的な打撃を与えることに貢献するだろう」とのべています。しかし、イラク戦争の誤りに目をつぶったままでは、自国はもとより世界の世論を納得させられません。
もともとイラクにはなかった大量破壊兵器を攻撃の口実にするばかりか、イラク旧政権が国際テロ組織アルカイダと結びついているというウソの口実を掲げてイラクに攻め込み、テロ撲滅どころかイラクをテロの温床に変えたのは、米英軍のイラク侵略戦争です。米軍の存在そのものが標的となり、イラクの勢力を巻き込んで報復の応酬をよびおこし、治安と主権回復への障害をつくりだしてきました。
ところが、米軍はイラクに居座り続け、数十億ドルを投じて、十四の永続的基地をはじめ約百カ所の米軍基地を建設中です。治安の回復も主権の行使もできる保証はありません。
こうしたイラクの現実に日々直面している米本国でも世論は大きく変わり、米軍撤退を求める声が多数になっています。最近の一連の世論調査で、ブッシュ大統領への支持を三割前後に低落させている最大の要因は、イラク戦争です。ABC=ワシントン・ポスト調査(十一日―十五日実施)によると、59%がいまではイラク戦争を「誤り」だと考え、54%が米軍を引き揚げてゆくべきだと答えています。そのうちの31%が即時撤退を求めています。
自衛隊を撤兵させよ
米国だけでなくイラクへの派兵国でもその態度が問われています。イタリア新政権は、選挙公約どおりに自国軍兵士二千六百人を撤退させると表明しました。
米政権のウソをうのみにイラク侵略戦争を支持する立場から憲法を踏みにじってイラクに派兵した日本政府は、米軍指揮下の「多国籍軍」に組み込んだ自衛隊をいまこそ撤兵させるべきです。求められているのは、国連中心のイラク復興支援に向けた自主的で平和的な外交努力です。