2006年5月30日(火)「しんぶん赤旗」
委員会採決で緊迫 代用監獄法案
廃止は国際的な要請
日本共産党法務部会長 仁比参院議員にきく
代用監獄法案が国会で審議中です。日本共産党法務部会長の仁比聡平参院議員に聞きました。
――代用監獄法案とはどんな法案ですか。
被疑者が逮捕され、裁判所が勾留を決めたら、警察の留置場ではなく法務省が管轄する拘置所に身柄を移すというのが法の原則です。捜査の行き過ぎと乱用から人権を守るためです。しかし、現実には、被疑者の98・3%が警察留置場に長期間勾留されています。
約一世紀前の一九〇八年に監獄法が、拘置所数が足りないという理由で「警察の留置場を代用することができる」として設けられたのが代用監獄制度です。これを永続化するのが、今回の法案(刑事施設及び受刑者の処遇法案)です。
自白を強要
――どこが問題ですか。
「代用監獄」は自白強要と冤罪(えんざい)の温床とされ、国際人権規約委員会からたびたび勧告を受けるなど廃止が強く求められてきました。
警察留置場は、外からの監視もチェックもない密室です。被疑者は睡眠、食事、入浴から差し入れまで二十四時間、生活や行動のすべてを警察の管理・支配のもとにおかれます。警察はこれを最大限に利用して自分たちが思い描いた通りの自白を強要し、多くの冤罪がつくり出されました。
警察庁は「犯罪捜査を適正、迅速に遂行するため」といいますが、被疑者を手元におき「迅速」に自白を得られる制度を手放したくないというのが本音です。
――世界の流れはどうなっていますか。
国連の世界人権規約では「有罪が確定していない被拘禁者は、無罪と推定され、かつ、それにふさわしく処遇されなければならない」としています。ところが政府は「無罪推定の原則のルールはガイドラインにすぎない」(矯正局長)という驚くべき答弁をしました。
国際的には当然のルールを無視した政府の姿勢をきびしく批判しなければなりません。各国では捜査機関による未決拘禁の縮少が進んでいます。代用監獄廃止は、国際的な要請でもあります。
――捜査機関と身柄拘束施設の分離が課題になっていますが。
警察庁は法案に留置担当官は捜査に従事しないことをあげて「人権を尊重した」といいます。捜査機関と身柄拘束施設を完全分離するのは世界共通の原則ですが、警察庁はすでに「一九八〇年から捜査部局と身柄管理部局(看守係)を分離した」と主張してきました。しかし、その後も冤罪事件はあとをたちません。同じ警察のなかで係を分離しても極めて不十分です。
状況は緊迫
――未決拘禁者の処遇の課題は。
未決拘禁者の処遇は、(1)人権問題(2)刑事手続き(3)国際問題―という面からも重要な課題です。無罪と推定され、それにふさわしく処遇されること、また、防御権が最大限保障されることが必要です。この問題でも法案は極めて重要な弁護人との面会(接見)の停止規定など重大な問題があります。
政府与党は月内にも委員会採決をねらっており、状況は緊迫しています。この法案を廃案にし、代用監獄は、きっぱり廃止するためにがんばります。