2006年5月31日(水)「しんぶん赤旗」
医療改悪法案で小池議員質問
75歳以上も保険証取りあげ
「悪質滞納者」扱い
七十五歳以上のお年寄りから保険証を取り上げ、資格証明書を発行することは従来の厚生労働省の方針の重大な転換だ――三十日、参院厚生労働委員会での日本共産党の小池晃議員の質問で、医療改悪法案に盛り込まれた新たな「高齢者医療制度」(七十五歳以上を対象)の矛盾が浮き彫りになりました。
新制度では、いままで保険料を払っていなかった被用者保険の被扶養者をふくめ、すべての高齢者から保険料を徴収します。そのうち約八割が年金からの天引き対象になります。
わずかな年金からの天引きそのものが、「憲法二五条で保障された生存権を破壊する」(小池氏)大問題ですが、天引きされない人も深刻です。
国民健康保険では、保険料の滞納者から国保証を取り上げ、窓口で十割全額を払わなければならない資格証を発行していますが、今回、七十五歳以上の後期高齢者にも広げようとしています。さらに、厚労省は、未納の高齢者には「短期保険証」(三―六カ月の有効期限)の発行も検討していることも明らかにしました。
「いままでの国民健康保険では、老人医療の対象者には資格証を発行しなかった。この理由はなにか」と問う小池氏に、厚労省の水田邦雄保険局長は「現行制度では、保険料を徴収した主体が給付を行う仕組みになっていないからだ」と答弁。
小池氏は「いまのはごまかしだ」とのべ、高齢者は公費医療(被爆者や障害者、結核への医療など)と横並びで資格証発行の対象から外してきた事実を示し、「このような医療を受けている人からは、いくらなんでも保険証を取り上げることはできない、と厚労省は判断していたからだ。なぜ、公費医療は外しているのか」と追及。水田局長は、「公費医療については承知していない」と答弁不能になりました。
小池氏は、「今回、こっそりと後期高齢者医療制度で保険証をとりあげる。七十五歳まで頑張って税金や保険料を収めてきた人を『悪質滞納者』扱いすることは許されない」とのべ、撤回を求めました。
重症患者にも重い負担増
また、小池議員は高齢者の長期入院患者(療養病床)の居住費、食費の自己負担、高額療養費の自己負担限度額引き上げなど、「弱い者いじめ」で国民の負担増がどうなるか、具体例を示して告発しました。
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改悪案では、七十歳以上で療養病床に入院する患者の食費、居住費を今年十月から引き上げます。七十三歳の男性が療養病床に三十日間入院した場合、現在の負担は四万七千二百八十円ですが、十月からは七万五千二百八十円に。さらに、〇八年四月からは、七十―七十四歳の患者負担が二割になるため、九万八千五百六十円になります。(グラフ参照)
高額療養費は、がんや心臓病などの重症患者が高額の医療費負担になった場合、負担の限度額を設けて軽減する制度です。七十二歳の女性が、胃がんで手術し、二十四日間入院した場合、現行では四万九千五百六十円の自己負担です。改悪案による限度額引き上げにより、今年十月から五万三千七百六十円、〇八年四月からは七万一千四百六十円になります。厚労省の水田邦雄保険局長は「このような負担増になる」と認めました。
小池氏は、政府が「受益者負担」を負担増の理由にしていることにたいし、長期入院患者や、がんの手術、心臓病の治療を必要とする重症患者は「受難者」だとのべ、「重い負担をかぶせることは許されない」と批判しました。