2006年5月31日(水)「しんぶん赤旗」

農村混乱・荒廃の「改革」

収量上げても収入増えず

助成金なく耕作放棄広がる

農林水産委で紙参院議員


 圧倒的多数の農家を助成対象から排除する「農政改革」に批判が高まっていますが、日本共産党の紙智子参院議員は三十日開かれた農林水産委員会で農政改革関連法案の質問に立ち、農家の声をもとに「改革」の矛盾と危険性を指摘しました。


実績払いの矛盾

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 「農政改革」は、作物ごとに行ってきた価格保障などの価格政策をすべて廃止し、一部の大規模経営に助成金を交付する内容です。対象は、都府県四ヘクタール・北海道十ヘクタールの認定農業者が基本です。

 米や麦、大豆、テンサイ、でんぷん、でんぷん原料用バレイショの経営に「品目横断的経営安定対策」として助成金が支払われます。これらの作物が二〇〇六年までの三年間の生産実績を中心に支払われるものです。

 紙氏は、北海道の地方公聴会で出された「生産実績がない農地は助成金がないため引きうけ農家がなく、耕作放棄地になる」との不安の声を紹介。とくに離農した酪農家の草地は、畑地にしても助成対象とならないため、結局、耕作放棄地が広がると指摘しました。

生産意欲なくす

 紙氏は、農家が頑張って収量を上げても過去の実績払いがほとんどで収入が増えず、「がんじがらめで夢がない。離農を考える」という空知市で米麦三十四ヘクタール経営する大規模農家の声を紹介し、生産意欲を失わせる「改革」案を批判しました。

 府県では水田の転作として三年から四年に一度米作りをやめて麦や大豆をブロックローテーションの形で作っています。しかし助成対象にならない小規模農家は、麦や大豆を作っても生産費を大きく下回るため米作りに専念します。紙氏は「多くの担い手以外の農業者が離脱すればブロックローテーションをこわし、地域営農にも打撃を与える」とのべました。

一律基準に批判

 「改革」案では、二十ヘクタールを基本面積として農地を集め、法人化をめざす集落営農も助成の対象になります。

 紙氏は、早くから集落営農の組織化に全県あげてとりくみ、“先進地”岩手県でも一律基準に対応できないことを強調しました。花巻市では、集落営農のリーダーも「稲作の組織化に戸惑いとハードルを感じている」とのべ、助成対象となる転作作物の受託組織の要件緩和を求めていることを指摘しました。

 経理の一元化を始めている旧胆沢町の集落営農も苦悩しています。「特定の人だけがいい思いをすることになりかねず、合意がとれない」「息子が定年後に農業をやりたいといっているので集落営農には乗れない」「集落営農を担う主たる従事者にも後継者がいない」との声を紹介しました。

 中川農水相は、紙氏の指摘に直接答えず「良い経営をする農家がでる」と答弁するだけでした。

 紙氏は「実態と農家の思いを無視して、全国一律の押しつけはやるべきでない」と政府の計画を批判しました。


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