2006年5月31日(水)「しんぶん赤旗」
年金不正免除
納付率圧力を批判
岐阜・大垣社保課長 長官に文書送付
国民年金保険料の不正免除・猶予手続き問題で、不正免除が公表された岐阜県の大垣社会保険事務所国民年金保険料課長(43)が三十日、社会保険庁長官あてに、〇七年度までに納付率を80%にするという方針のもとで、納付率達成に向け圧力があったことを批判する文書をファクスで送付したことが分かりました。
文書は冒頭で「当事務所における免除問題について、私はお詫びするつもりもありませんし、敢えて間違いを認めるつもりもありません。私が謝罪することによって、部下の名誉を傷つけるからです」とのべたうえで、こう書いています。
「国民年金目標納付率の達成は『目標』ではなく、いつのまにか必達納付率という言葉が使われるようになり、十二月末必達納付率を達成しなければ所長が上京して説明をしなければいけない」などの圧力があったと告白しています。
課長はさらに、「このような納付率達成という圧力の中、我々職員は『目標納付率の達成のためではない、被保険者の方々のために、将来年金を受けていただくために、障害年金の保障を得てもらうために、日々仕事をしているんだ』という気持ちで取り組んできました」と免除した理由を語っています。課長は最後に退職の意思を表明しています。
同課長は記者団の取材に対し「国民本位と言いながら、やっていることは組織を守ることだ。数字は結果としてついてくるものではないか」と、納付率を設定した社保庁を批判しました。
同事務所の市原光男所長は「申立書は見たがコメントは差し控える。退職の申し出には、慰留している」と話しています。
社会保険庁が二十九日公表した国民年金の不正免除・猶予問題の緊急調査結果で、本人の同意なしに手続きしたのは、これまでに明らかになっていた東京、三重、京都、大阪、長崎の五都府県に加え、岐阜(六百三十九人)、静岡(六千四百四十人)、奈良(二百三十四人)、秋田(百二十七人)、埼玉(一万二十七人)など五県でも判明し、総計八万二千四十人に及んでいます。不適切な手続きのパターンは、本人の意思を確認せずに手続きしたケースのほか、電話で意思を確認し、申請書を代理作成、代理作成後、申請書を受け取ったもの――などがあります。