2006年5月31日(水)「しんぶん赤旗」

未来社会は人がまじめに働かなくなる?


 〈問い〉 「共産主義の社会は財産が共有となるのだから、競争はなくなる。でもそうなったら、だれもまじめに働かなくなる」という人がいます。どう考えればよいでしょうか。(岡山・一読者)

 〈答え〉 いまの資本主義社会では、“いかにもうけるか”を原理とする仕組みのため、労働者の生活保障などは二の次で、長時間・過密労働がまかりとおり、自分のやりたい仕事ができている人は多くありません。しかし、私たちがめざす、未来社会(=共産主義・社会主義の社会)では、生産の目的が「社会全体の利益」へとかわり、労働が強制ではなくそれ自体が喜びとなるように変わります。

 ご質問のような疑問が起きる背景には、従来の未来社会論のもっていた弱点があります。

 マルクス、エンゲルス以前の共産主義思想は「私有財産の否定、共有」ということが中心でした。

 「私有財産が否定」されるのなら、それを豊かにするための各人の努力も必要がなくなり、競争も意味をもたず、結局、悪平等の社会になる、というのが論理的帰結になります。現にソ連社会はそういう「共産主義」で、だから崩壊した―こういう見方はかなり広範に横行しています。

 しかし、「私有財産の否定=共産主義」とする見方は、本来の科学的社会主義とはまったくちがうのだということを明確にしたのが、新しく改定した日本共産党綱領です。

 マルクスは1867年、『資本論』の中で初めて、生産手段と生活手段を明りょうに区別し、生産手段を社会化することが変革の中心問題であり、生活手段は未来社会でも個々人の所有になることを明確にしました。

 新しい綱領では、この見地をふまえ、未来社会への変革の中心が「生産手段の社会化」であり、レーニン以降に定説となってきた、低次の段階(労働に応じて受け取る)を社会主義、高次の段階(欲望に応じて受け取る)を共産主義と段階づける2段階論が、分配中心に考える誤りであることを明確にしました。

 新しい綱領は、市場経済を通じて社会主義をめざすことも明記しました。市場経済ですから当然、競争も存在し、未来社会でもいまとは別のある種の競争がつづいていくことは疑いえません。

 未来社会では、今日のような「生活のために、しかたなく働く」労働とは大きく変わるでしょう。さらに、労働時間が大幅に短縮されることによって、自由に利用できる時間がふえ、その自由な時間を利用して、自分の能力を開花させ、生きがいをもって働く。そういう社会が展望できるのではないでしょうか。(喜)

 〔2006・5・31(水)〕


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