2006年6月2日(金)「しんぶん赤旗」
主張
年金不正免除
根本問題にメス入れるべきだ
国民年金保険料の徴収をめぐって、二十六都府県の社会保険事務所で、保険料免除・猶予の不適切な手続きが行われていたことが明らかになりました。本人の申請もなく意思確認もないままに手続きが行われることはあってはならないことです。
免除が納付率向上の柱
今回の事態は、社会保険庁が、国民年金保険料の納付率向上にとりくむもとで起こりました。
免除・猶予を受けることにより、十年以内であれば保険料を追納でき、障害年金の受給権が確保されるとともに、追納できなかったとしても、将来、老齢年金について国庫負担相当分の給付が保障されるので、「申請の勧奨を徹底してきた」と、社会保険庁は調査報告書(五月二十九日)でいっています。
手続きの法違反については、「由々しきこと」としながらも、免除・猶予の奨励の拡大そのものは、国民の年金権や給付保障のためだと正当化しています。
しかし、社会保険庁のやり方は、国民の年金権保障とは、異質のものです。
国民年金保険料の免除・猶予の奨励拡大を、保険料の納付率向上の柱に位置づけていることです。国民年金保険料の納付率を二〇〇三年度の63・4%から二〇〇七年度80・0%に引き上げるために、保険料徴収で7・4%、免除・猶予等で9・2%の効果を見込むという「国民年金保険料徴収に係る行動計画(アクションプログラム)」(二〇〇四年八月)をつくっています。
社会保険庁の村瀬長官は、同年七月の就任記者会見で最も重視するとりくみとして、保険料の徴収をあげ、「なんとしても納付率八割を達成するためのアクションプログラムについて民間の力をお借りして達成したい」とのべていました。
行動計画が、村瀬長官の肝いりで作られたことは明らかです。
さらに、昨年十月の行動計画改定版では、「所得情報や年齢等に基づき、申請対象可能層を抽出し、所得による確度や全国平均の免除割合等により目標設定」するよう求め、全国の社会保険事務所を追い立てています。
低所得者の年金権確保などといいながら、所得の低い人々の生活の苦しみに心を寄せている気配はかけらも感じられません。“納付率八割目標・達成”という、間違った“成果主義”があるだけです。
保険料未納者の64・5%が、未納の理由として「保険料が高く経済的に支払うのが困難」をあげています。四十代の人では、75%を上回っています。また、二十代後半では経済的困難に加え、「国民年金をあてにしていない、またはあてにできない」(19%)という人が目立ちます(社会保険庁調査)。
未納問題を悪化させる
二十五年間保険料を払い続けないと給付がまったく受けられず、四十年間納めても生活できるだけの年金がもらえない。これが、未納問題の根源です。ところが、政府は、二〇〇四年度の年金改定で、将来にわたって年金保険料を毎年引き上げ、給付は実質額が切り下げられるという、改悪を行いました。これで国民の年金不安はいっきょに高まり、年金不信に拍車がかかっています。未納問題を解決するどころか、逆に悪化させる原因を政府がつくりだしているのです。
高すぎる保険料や年金不信という根本問題にメスを入れず、ただ納付率を八割以上にするようなやり方は根本から改めるべきです。