2006年6月2日(金)「しんぶん赤旗」
論戦ハイライト
厚労省がデータ“改ざん”
療養病床削る根拠なし
医療改悪法案に盛り込まれた六年間で二十三万床もの療養病床を削減する計画。一日の参院厚生労働委員会で、日本共産党の小池晃議員は、厚労省が削減を合理化するため、データの「書き換え」まで行っていた事実を示しました。政府・厚労省の答弁は迷走し、病床削減の根拠が根底から崩れました。
医療改悪法案で小池議員
患者追い出し
病床削減、患者追い出しの先取りとして、二〇〇六年度診療報酬改定では、入院患者の半数が、「医療の必要性が低い」とされる「医療区分1」に分類され、点数が大幅に引き下げられています。(七月実施予定)
療養病床を持つ病院の試算では、軒なみ大幅減収です。小池氏は、厚労省の医療課長が愛知県保険医協会との会合で「こんな低い点数だったら追い出されるじゃないか。まさにそういう点数にした」と発言していることをあげ、「追い出し」にはつながらないと答弁してきた川崎二郎厚労相をただしました。
小池議員 大臣の答弁と実態が違うではないか。
川崎厚労相 入院している方の不安を招かないよう適切な対応をする。
小池氏は、「(患者)追い出しが現実になりつつある」とのべ、診療報酬の緊急再改定を要求。療養病床を持つ医療機関への緊急実態調査を求めました。
項目書き換え
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政府・厚労省が、療養病床削減の根拠としているのは、入院患者の半分が「医療の必要性が低い」という「調査結果」です。
厚労省は、中央社会保険医療協議会(中医協)の調査結果をもとに、「医師の指示の変更」の回数を、「医療の必要性」をはかる物差しとして持ちこんだのです。
小池 医師による「指示の変更」がないと、医師による「直接の医療提供」がないというのか。
水田邦雄保険局長 医療の必要度の判断を客観的にはかる物差しとして用いた。
小池 医師による「指示の変更」がなければ、医師の診療行為は「ない」という判断なのか。
水田局長 「ない」ということではない。
小池氏は「指示変更しか尺度にしなければ、他は全部切り捨てることになる」と指摘。「客観的に医療の必要度をはかる根拠になっていない」と批判しました。
さらに、厚労省は医療経済研究機構の調査結果の引用にあたって、質問項目の「書き換え」まで行っていました(表参照)。
療養病床削減の「受け皿」として、老人保健施設に誘導しやすくするため、厚労省は調査にない「福祉施設や住宅によって対応できる」とする文言を新たに付け加えたのです。
小池 なぜこんな書き換えをやったのか。
磯部文雄老健局長 入院が不要であるという趣旨を分かりやすく表現した。
学問所見なく
「医療の必要性が低い」とされる「医療区分1」の設定について、小池氏は、「最初から約50%以上が『医療区分1』になるように設定している。療養病床半減が先にありきだ」と追及しました。
重大なのは、四月十三日になって突然、「医療区分2」以上の人でも、症状が認定されてから一定日数を過ぎれば「医療区分1」になる制限が加えられたことです。尿路感染症や脱水症、体内出血で「医療区分2」の患者は、七日間の算定日数を過ぎれば「医療区分1」になり、必要な医療が受けられなくなってしまいます。
小池 算定日数の上限に達すれば、どんなに重症でも、追い出しの対象になる。こんなやり方が許されるのか。
水田局長 一般的には七日あれば治る。専門家の意見もふまえ、設定した。
小池 尿路感染症、脱水症は七日以内に治るという「学問的所見」はあるのか。
水田局長 専門組織がそう判断した。
何ら根拠を示せない局長答弁に、委員会室では失笑も。小池氏は「医療の必要性は、個々の病態に応じて医師が判断すべきものだ。こういう機械的な区分を持ちこんで、半分以上の患者を切り捨てることは許されない」と批判。療養病床削減の撤回を求めました。