2006年6月5日(月)「しんぶん赤旗」
先物取引規制に抜け穴
大門議員追及
天下り団体が“圧力”
|
参議院で審議が続いている金融商品取引法(投資サービス法)で、財産をすべて失うような金融商品被害を出している商品先物取引に不招請勧誘(取引を希望しない人への勧誘)の禁止を求める動きが強まっています。
金融商品取引法は、横断的な規制をめざしたものでしたが、経産省や農水省が所管する商品先物取引では、被害の発端となっている訪問や電話による不招請勧誘を禁止していません。
これにたいし金融被害者の団体や弁護士が批判の声をあげています。参院の財政金融委員会では日本共産党はもちろん、民主党も、与党である公明党まで、商品先物取引に不招請勧誘の禁止を求めています。
官僚出身が10人
なぜ商品先物取引が規制から外されているのか―。日本共産党の大門実紀史議員は一日と二日の質問で、規制がすすまない理由に、官庁から業界団体への天下りの問題があると追及しました。
大門氏が示したのは、全国の商品取引所をたばねる全国商品取引所連合会の役員十一人の名簿。商品先物を所管する農水省と経産省の出身者が五人ずつ、計十人を占めています。この団体は、金融商品取引法のたたき台を審議する金融審議会に、商品先物への規制をしないよう意見を出していました。
さらに、全国八十三社が会員となっている日本商品先物取引協会にも経産省と農水省OBが天下っています。同協会副会長の坂井宏氏(元経済産業大臣官房付)に大門氏は業界のあり方をただしました。
本音あけすけに
大門氏 (官庁の)先輩が業界代表だと、現職の人は業界の意見を重視してしまう。
坂井氏 (天下りという)ひとつのシステムがワークしているのも事実。私自身は役所出身だからと、役所の意見をハイハイと聞くつもりはない。役所にはきちっとものをいう。
天下り団体が省庁に圧力をかけ、効力を発揮していることをあけすけに語りました。
「商品先物取引は(顧客)十一万人のうち新規に七万人が出入りし、その人たちが損をする構造になっている」。大門氏の指摘に坂井氏は「ハイリスクを望む人たちへの市場を提供している」とのべ、多くの被害者を生んでいることに何の反省も示しませんでした。
さらに大門氏は「勧誘マニュアルでは断られたら笑顔で聞き流せとある。一度断られたら再勧誘は禁止なので、それを無視するためだ」と、無法な勧誘が横行していると告発。坂井氏は「新規の人が入らないと市場が大変なことになる」と合理化しました。
大門氏は、損をする人たちを引き入れないともたない先物取引市場は「ゆがんだ市場」だと批判。天下りをやめ、健全な市場をつくるべきだと主張しました。
商品先物取引 もともとは値動きの激しい穀物や原料などを業者が固定した値で先に購入しておくためのもの。農水省が所管する大豆、小豆、コーヒーなど穀物、経済産業省が所管する石油、貴金属などがあります。
商品先物取引では、証拠金を担保にその数十倍の額を投資することができるため、業者に預けた額の何倍もの損失を被るリスクがあります。
一般の人が、先物取引をするさい、業者がリスクの説明をせず、複雑な仕組みを理解できないまま投資をさせられ、多額な手数料ともあわせ、財産を全て失う被害が多発しています。