2006年6月10日(土)「しんぶん赤旗」

ザルカウィ氏死去

イラク国民、テロを拒否

“米占領に抵抗続く”


 【カイロ=松本眞志】「イラクの聖戦アルカイダ組織」の指導者ザルカウィ容疑者が米軍の空爆で殺害された問題で、イラクの国内外では歓迎の声がある一方で、米軍に対するイラク国民の抵抗活動や宗派間対立にともなう暴力の広がりには影響を与えないとする反応が伝えられています。


 カタールの衛星テレビ・アルジャジーラが八日に報じたところによると、イラク大統領の治安問題の顧問を務めるワフィク・サマライ氏は「ザルカウィの死亡はイラクで増大する暴力行為を抑制する上で重要な転換点だ」と強調。クルド人議員のアドナン・ムフティ氏も「イラク国民やテロの犠牲者にとって朗報だ」と語りました。

 一方、イラクのイスラム聖職者協会のクベイシ師は「米国のメディアは、ザルカウィ以外にイラクで米国の占領に抵抗する者がいないかのように大げさに報道しているが、実際、イラクで占領に抵抗しているのは、外国軍駐留に反対しているイラク人だ」と指摘しています。

 エジプトのイラク問題専門家フセイン・ドゥーリ氏も「イラク人自身による抵抗活動と比較した場合、ザルカウィの死はイラクの治安状況に影響を与えるとは思わない」と主張し、米軍に対する抵抗活動が継続するとの見解を示しました。

 アラブ首長国連邦のイラク政治の専門家リカア・マッキ氏は「注目する必要があるのは、ザルカウィは当初から、米軍やその協力者だけでなく、宗派主義的考えをもとに異なった宗派の人々を標的にしてきたことだ。そうした傾向は、多くのイラク人の目的と異なるため、否定されてきた」といいます。

 マッキ氏は「米軍に対する抵抗の最前線、特にアンバル州でたたかっているイラクのイスラム組織は、ザルカウィの戦術や考えを採用しなかった。暴力はザルカウィの死によって減少することはない。政府による国民和解の政治プロセス以外に治安問題を解決する手だてはなく、これができなければ長期にわたる宗派間の対立が続き、国を分裂に導く事態となるだろう」と語っています。


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