2006年6月10日(土)「しんぶん赤旗」
「見舞金」2000万ドル 4倍増
米軍、作戦で犠牲のイラク人に
虐殺の“口止め”疑惑も
【ワシントン=山崎伸治】米海兵隊がイラクのハディサで民間人を虐殺した事件で、海兵隊が被害者の遺族に金銭を支払っていたことが隠ぺい工作の一環だったかどうかが、現在進行中の調査の焦点となっています。
八日付の米紙ニューヨーク・デーリー・ニューズが伝えたもので、事件の犠牲者十五人の家族にそれぞれ二千五百ドル(約二十八万五千円)を支払ったことが問題となっているといいます。海兵隊司令部は同紙に対し、金銭の支払いがあったことは認める一方で、「法的な責任や過失を認めたものではない」と回答しています。この事件について現地部隊は当初、武装勢力が道路脇に仕掛けた爆弾が爆発したものと報告していました。
これについて、海軍の弁護士を務めていたジョン・ハトソン氏は同紙に、「もし武装勢力の(仕掛けた爆弾による)犯行ならば、なぜ米国が支払わねばならないのか。口止め料だと考えざるを得ない」とコメントしています。
また八日付の米紙ボストン・グローブは、米軍が作戦行動の結果、死亡したり、重傷を負ったりしたイラク民間人の家族に対して支払う「見舞金」の総額が、二〇〇四年の五百万ドル(約五億七千万円)から昨年は二千万ドル(約二十二億八千万円)に跳ね上がっていると報じました。
「見舞金」は〇三年に創設された「司令官緊急対応プログラム(CERP)」と呼ばれる基金から支出。その財源は武装勢力から押収した資金や国連からの寄付、米政府の予算です。
昨年の場合、ハディサ事件のように被害者一人当たり二千五百ドル支払ったとすると、八千人の被害者がいたことになります。同紙は「どれだけの額が何回支払われたのか、正確には分からない」と疑問を呈しています。
イラク駐留多国籍軍のカレリ司令官は二日放送の米ラジオのニュース番組で、金銭の支払いは「この地域では日常のことだ。弔慰金とでもいうべきものだ」と述べ、日常的に行われていることを認めています。