2006年6月13日(火)「しんぶん赤旗」
北朝鮮人権法案を可決
共産党反対 拉致問題解決に有害
衆院特別委
衆院拉致問題特別委員会は十二日、「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律案」(北朝鮮人権侵害問題対処法案)を自民、公明、民主の賛成多数で可決しました。日本共産党と社民党は反対しました。
日本共産党の笠井亮議員は、日本の主権を侵害した国際的犯罪行為である拉致問題と、北朝鮮の内政にかかわる「脱北者」問題を同列に扱い、政府に「施策を講ずる」ことは、「北朝鮮からの脱出の動きを促進することを国家の行為としておこなうことになり、内政問題への介入となる」と強調。国際的道理をもたない法律の制定は、拉致問題解決にとっても極めて有害であり、問題解決のためには、六カ国協議など外交的解決の努力を強めることが重要だと指摘しました。
笠井氏はまた、「わが国に保護を求めてきた脱北者を人道的に保護することは当然である」とのべるとともに、「かかる重要な法案を会期末に審議抜きで採択することは断じて容認できない」と意見表明しました。
同法案については、民主党が昨年につづいて今国会に「脱北者支援」を明記した法案を提出する一方、自民、公明の与党は「脱北者」に言及しない法案を提出し、両者で修正協議を続けてきました。
三党は九日に両案を一本化して今国会での成立をめざすことで合意。与党案を基本に、民主党が主張していた「脱北者支援」を盛り込み、十二日の委員会に日本共産党、社民党の反対をおしきって委員長提案として提出、質疑なしで採択しました。
北朝鮮人権侵害問題対処法案 「目的」として、拉致問題の解決をはじめとする北朝鮮の人権侵害問題について、国民の認識を深め、国際社会と連携し、北朝鮮の人権侵害の実態を解明し、その抑止を図ることを掲げています。第二条で、政府は「拉致の問題を解決するため、最大限の努力をする」ことを明記。第六条で「政府は脱北者の保護及び支援に関し、施策を講ずるよう務める」としています。
笠井議員の反対意見表明(大要)
「脱北者」問題使った圧力は外交交渉解決に大きな障害
十二日の衆院拉致問題特別委員会で、日本共産党の笠井亮議員が北朝鮮人権侵害問題対処法案に対しておこなった反対の意見表明(大要)は次の通りです。
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わが党が、反対する最大の理由は、本法案が、わが国の主権を侵害した国際的犯罪行為である拉致問題と、北朝鮮の国内の人権侵害問題を同列においていることです。とくに、基本的には北朝鮮の内政にかかわる問題である「脱北者」問題というまったく性格を異にする問題を、「北朝鮮当局による人権侵害問題」として同列に扱い、政府に「施策を講ずる」ことを定めていることであります。
もとより、わが国に保護を求めてきた脱北者を人道的に保護することは当然です。しかし、「脱北者」の「支援」を、政府におこなわせる法律を定めることは、北朝鮮からの脱出の動きを促進することを国家の行為としておこなうことになり、内政問題への介入となります。「脱北者」問題を法律に定める狙いについて、「脱北者の大量脱出は、体制崩壊につながる。北朝鮮にとって具体的に脅威になることを盛り込んだほうがいい」という主張まであります。相手がどの国であれ、特定の国を名指しして、その国の内政にかかわる問題を日本の国内法で明記し、国としての対処を定めることは、内政干渉となることは明らかであります。
こうした国際的道理をもたない法律を制定することは、拉致問題の解決にとってきわめて有害なものです。
今日、拉致問題は、日朝の二国間協議としても、六カ国協議の場においても、さらにその他の国際的な場においても、外交交渉による解決への努力が継続中の問題です。その努力を積み重ね、外交的解決の道をあくまで追求すべきであります。
「脱北者」問題という相手国の内政問題を使って北朝鮮に圧力をかける法律を制定することは、外交交渉による拉致問題の解決に重大な障害を持ち込むものにほかなりません。
この法案では、以上のべた基本点以外にも、「国内外の民間団体との密接な連携」、「財政上の配慮その他の支援」などの判断が政府の裁量にゆだねられており、歯止めがありません。さらに、日本の出入国管理への影響など重大な問題を含んでいます。
かかる重大な問題は、国会での慎重な審議が必要であり、政府の明確な見解の表明が不可欠であり、会期末に審議抜きに採決するというやり方も、断じて容認できません。最後に、このことを強く指摘して、反対の意見表明とします。