2006年6月14日(水)「しんぶん赤旗」
主張
米軍のイラク人虐殺
駐留する限り根は絶てない
イラクの混乱は、国際テロ組織アルカイダの幹部といわれるザルカウィ容疑者が殺害されたあとも、改善のきざしをみせていません。こうしたなか、駐留アメリカ軍による民間人殺害事件があいついで報道され、その暴虐、無法ぶりが怒りをよんでいます。
軍隊が他国で無抵抗の住民を殺りくすることは、戦時においてさえ許されない国際的な犯罪行為です。あいつぐ民間人殺害は、米軍がイラクに駐留し続けることがイラク国民の利益に反するものであることをいよいよ明白にしています。
繰り返す非情な蛮行
報道された米軍による虐殺事件は、一件や二件ではありません。なかでも、米海兵隊がイラク北西部ハディサで昨年十一月、二十四人を射殺したと報じられた事件は、「アメリカが認めたがらないイラク戦争の真実をあぶり出した」(米誌『ニューズウィーク』)として、真相と責任を糾明する動きが米国内で強まっています。米上院軍事委員会は、公聴会開催に動いています。
海兵隊は当初、米兵ひとりとともに十五人の住民が道路での爆発によって、残りは武装勢力との銃撃戦で死亡した、と発表していました。しかし、事件直後のビデオ映像と現地住民などの証言にもとづく米誌『タイム』報道で民間人虐殺の疑いが濃くなり、米軍内部でも調査がはじまっています。
報道では、爆発で米兵ひとりが死亡した後、米軍は攻撃されていなかったにもかかわらず、タクシーからおろされ逃げる五人を射殺し、さらに民家に踏み込んで次々と十九人を射殺した、といわれています。これでは「海兵隊がうそをつき、隠ぺいしようとした」(クライン下院議員)ことは否定しようがありません。
一連の事件を通じてはっきりしたのは、米軍が蛮行をくりかえしている非情な現実です。イラク・イスラム党は、米軍が五月だけで二十九人の民間人を殺害したと告発しています。イラクの人々は、「米軍の市民虐殺は日常的」(イラク・イスラム聖職者協会のクバイシ師)といわれるような厳しい現実を生きぬかなければなりません。
アメリカが、イラクの前政権を崩壊させ、占領を続けてきた口実は、とっくに崩れています。それにもかかわらず、アメリカが占領を続け、民間人の虐殺まで繰り返しているという事実は、米軍の戦争、占領行為の不当性をいっそう浮き彫りにしています。しかも、そのことが「内戦」状態ともいわれるイラク情勢の悪化を招いていることはきわめて重大です。
撤退求める米国民
米国では、一連の事件をきっかけに、イラクから米軍を引き揚げよという世論が一段と高まっています。
「イラクが正常化しあらゆる抵抗勢力とテロ組織を打ち負かすまで米軍はとどまるというブッシュの前提条件は、まったく間違っている」「米軍兵士自身にとっても、世界における米国の立場にとっても、そしてもっともはっきりしているように、罪のない多くのイラク人にとっても、米国の存在は危険だ」(インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙)。
重要なのは、イラク国民が平和な日々をとりもどしテロや殺りくに脅えず復興にとりくめるようにすることです。イラクが混乱から抜け出し、市民へのあらゆる蛮行をなくすために、米軍撤退の見通しを明確にすることはいよいよ避けて通れません。