2006年6月14日(水)「しんぶん赤旗」
医療改悪法案に対する小池議員の反対討論(要旨)
十三日の参院厚生労働委員会で、日本共産党の小池晃議員がおこなった医療改悪法案に対する反対討論(要旨)は次のとおりです。
本法案は、高齢者や重症患者に情け容赦のない負担を強いるとともに、後期高齢者医療制度という差別医療の仕組みや療養病床の大幅削減など二十一世紀の日本の医療を大きくゆがめ、混合診療の拡大によって、保険証一枚あれば誰でもどんな病気でも診てもらえる日本医療の根幹を揺るがす法案であるといわざるを得ません。審議を打ち切り採決を行うことは国会の責任放棄以外の何物でもありません。
患者・高齢者の負担増の深刻さ
反対の第一の理由は、患者、高齢者の負担増の深刻さです。
今年度の患者負担増は平年度ベースで千七百億円であり、今回の改悪法案に盛りこまれた負担増がすべて実施される〇八年度には二千九百億円にものぼります。七十歳から七十四歳までの患者負担の一割から二割への引き上げ分だけで年間千二百億円、一人あたり年間二万円もの負担増になります。到底容認できません。
差別をもたらす後期高齢者医療
反対の第二の理由は、七十五歳以上の高齢者を対象とした後期高齢者医療制度の創設が、保険料負担増とともに、高齢者への差別医療をもたらすものであるからです。
新制度では、七十五歳以上のすべての高齢者から保険料を徴収し、滞納者から保険証を取り上げることまで法定化しています。現役世代の保険料を「現役向け」と「高齢者向け」に明示的に区分することともあいまって、介護保険と同様の給付抑制につながるものです。
後期高齢者医療制度の創設は、六十五歳以上の透析患者など障害者や高齢者への医療給付費を抑制し、憲法違反の「差別医療」をもたらすものであり、断じて認めることはできません。
6年間で23万床療養病床を削減
反対の第三の理由は、療養病床を六年間で二十三万床も削減することが、地域の医療と介護に深刻な打撃となることです。先取りとして七月からの診療報酬改定で、療養病床の入院患者の半数を「医療の必要性が低い」と決めつけ、点数を大幅に引き下げ、文字通り病院から追い出そうとしており、事態は切迫しています。法案を通してしまうのはあまりにも無責任です。
「命の格差」生む「混合診療」導入
反対の第四の理由は、「混合診療」の本格的導入によって、保険のきかない医療が拡大し、所得の格差が「治療の格差」「命の格差」となる危険を一層拡大させるからです。
保険のきく診療と保険のきかない診療を併用する「混合診療」は、「必要な医療はすべて保険で行う」という公的保険の大原則を崩すものです。
この背景には、自分たちの保険料負担を軽減させたいという日本の大企業・財界と、日本の医療を新たなもうけ口にしようとねらっているアメリカの保険会社・医療業界の強い要求があることは大臣も審議の中で「米国からいろいろ言ってきたことは事実」と認めたとおりです。
なぜ日米の保険会社や医療産業のもうけのために、国民の命や健康、国民皆保険制度が犠牲にならなければならないのか。あまりにも理不尽です。
健診のあり方を大きく変質さす
反対の第五の理由は、健診のあり方を大きく変質させるからです。現在は、老人保健制度にもとづき、市町村が住民の健診に責任を持っていますが、この制度をなくし、健保組合など各保険者に健診を義務づけられます。健診を積極的におこなうこと自体は必要ですが、市町村の責任をなくすことは、公衆衛生の観点からみて問題です。
医療受ける権利 国に保障の義務
すべての国民は、貧富にかかわりなく、医療を受ける権利を持っており、国はその権利を保障する義務を負うべきです。窓口負担の引き上げをやめ、引き下げること。保険診療が可能な医療を狭めるのではなく、充実させること。削減されてきた国庫負担を計画的に元に戻すこと。この立場に立って、日本の医療を立て直すことこそ、いま強く求められていることを指摘して、反対討論とします。