2006年6月15日(木)「しんぶん赤旗」

公共住宅 EUなどでは?


 〈問い〉 日本は公共住宅はやめ、住宅は民間まかせにしようとしていますが、EUなど諸外国ではどうなっていますか?(東京・一読者)

 〈答え〉 小泉内閣による「民間でできるものは民間に」という市場化政策のもとで国・自治体が公共住宅建設から撤退する方向がより鮮明になっています。

 東京・大阪などの大都市では近年、公営住宅は建て替えを除き新規建設がゼロです。

 都市再生機構によるUR住宅(旧公団住宅)も建設から完全撤退しました。

 1998年時点における公営、UR住宅、公社住宅など公的賃貸住宅のストックは295万戸で、全国の住宅総数4392万戸の6・7%(公営住宅5%)です。

 公営住宅を大量に払い下げたサッチャー政権誕生以前のイギリスにおけるそのシェアである約30%と比べてもいかに公共住宅の建設・供給を軽視していたかがわかります。

 日本は、第二次世界大戦での空襲などによって多くの住宅が焼失し、住宅不足数は420万戸におよびました。それは欧州でも同じでイギリス450万戸、西ドイツ(当時)600万戸におよびました。しかし欧州の多くの国では公的賃貸住宅の大量建設によって国民の居住確保を図る住宅政策に重点をおきました。最近の統計でも公的賃貸住宅の比率は、イギリス・世帯比22%(98年)、フランス・人口比18%(96年)、ドイツ・世帯比15%(96年)オランダ・世帯比36%(98年)、スウェーデン・戸数比22%(98年)、デンマーク・19%(99年)などとなっています。(平成15年度海外・都市開発動向調査、都市基盤整備公団総合研究所)

 日本においても、60年代〜70年代前半までは、大都市への人口集中が激化したため、かなりの公共住宅を供給しましたが、地価暴騰による用地難などで70年代後半から急激に供給が落ち込みました。90年代には住宅政策を「景気対策」と位置づけ、住宅金融公庫の住宅ローンによる持ち家建設が優先され、公共住宅建設、供給は大きく後退しました。

 欧州でも70年代半ば以降、住宅政策への政府介入の後退がすすみ、公的住宅の供給は後退しました。しかしそれは一律ではなく、たとえば、フランスは90年代、貧困、失業、高齢者の増大を背景に、再び公的住宅の供給が議論の的になり、検討が行われています。ドイツも80年代末の再統一で住宅不足が生じ、建設量が再上昇しています。

 また家賃水準も市場家賃の1/2〜2/3(英国)、1/2(仏)など市場家賃(民間家賃)よりかなり低く抑えています。(高)

 〔2006・6・15(木)〕


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