2006年6月17日(土)「しんぶん赤旗」
失業保険制度 欧米では?
〈問い〉 日本と欧米では、失業保険制度がどう違いますか?(大阪・一読者)
〈答え〉 失業保険は、失業した労働者に所得を保障する制度としてきわめて重要です。しかし、日本の雇用保険制度は、失業手当の給付額と給付期間の両面で、EU諸国とくらべて水準が低く、アメリカ並みの最低水準となっています。また、出勤日数と雇用期間の受給要件がきびしく、受給者数が少ないという問題もあります。
日本の失業手当の給付額は、離職前賃金の45〜80%、給付期間は最大360日です。アメリカは、給付額が離職前賃金の50〜70%で、給付期間は州によって違いますが、最大26週の州が多数です。
イギリスは、週54・65ポンドで、最大182日。スウェーデンは、離職前賃金の80%で、最大450日。デンマークは、離職前賃金の90%で、最大4年。ドイツは、離職前賃金の60〜67%で、最大18カ月。フランスは、離職前賃金の57・4〜75%で、最大42カ月。イギリス、スウェーデン、ドイツ、フランスでは、扶養家族がいる場合に給付額が加算されます。日本にはこうした加算はありません。
さらに、失業者保護の点で、EU諸国の制度には日本の制度にない特徴があります。
一つは、イギリス、スウェーデン、デンマークでは、自営業者も制度の対象者になっていることです。
二つは、補足的な失業扶助制度があることです。この制度は、失業保険の受給要件を満たさない失業者に対して、失業手当を支給するもので、原則として国庫負担によってまかなわれています。イギリスの所得対応求職者給付、スウェーデンの基礎保険、フランスの連帯失業手当がこれにあたります。給付期間は、イギリスとフランスの場合は、受給要件を満たす限り無期限であり、スウェーデンの場合は、一律300日で、600日まで延長可能です。
ドイツにも同様の失業扶助がありましたが、制度が改悪され、現在は、失業保険給付期間が終了した失業者のみを対象とする「失業給付II」という制度になっています。「失業給付II」への移行にあたっては激変緩和措置として、追加給付が2年間支給されます。
これらの欧米諸国の失業保険制度には、いずれも国庫負担があります。これにたいして、日本の公的負担は低く、それは、経済協力開発機構(OECD)の調査からも明らかです。「OECD雇用アウトルック」(2005年版)によると、日本の場合、失業給付がGDP(国内総生産)に占める割合は0・46%で、OECD26カ国のなかで20位です。
こうした日本の失業保険制度をみるなら、国庫負担を削減し、さらに保護水準を下げることは絶対に許せないことです。(筒)
〔2006・6・17(土)〕