2006年6月26日(月)「しんぶん赤旗」
社会保障1.6兆円削減
自民検討案中身を見る
軽い病気に保険きかず
介護の自己負担2倍に
政府・与党は、今後五年間に国の歳出を大幅に減らすとして、社会保障分野で約一兆六千億円もの大削減計画を検討しています。自民党の歳出改革プロジェクトチーム(座長・中川秀直政調会長)が議論している中身は、医療や介護、生活保護、雇用保険など国民のくらしに直結している制度に大なたをふるうというもの。成立したばかりの医療改悪法に続き、国民にさらなる負担増を求める内容です。
医療
保険免責の導入
医療分野では、医療費の一部を保険からはずして患者負担を拡大する「保険免責制度」の導入が浮上しています。
保険免責制度とは、医療費の一定額(たとえば外来受診一回あたり千円)までを保険の対象外とするもので、患者負担が広げられます。
たとえば、かかった医療費総額が三千円とすると、うち千円は「保険免責」として患者負担に。残り二千円の三割も患者負担のため、あわせて千六百円が窓口負担となります。風邪などの「軽い病気」の治療は、事実上保険がきかないのと同じことになります。
保険免責制度は昨年十月、厚労省の医療制度改革試案に医療費抑制のための選択肢として盛り込まれたものの、世論の反対で医療改悪法では導入が見送られました。しかし、谷垣禎一財務相が導入の検討を明言する(五月二十三日)など、政府・自民党は執念をもっています。財界も、導入を繰り返し求めています。
さらに自民党は、かぜ薬や湿布薬、うがい薬など市販薬と類似する医薬品を保険の対象外にすることも狙っています。診察を受けずに売薬で済まそうとする人が増え、効かない薬を飲んで重症化したり、手遅れになったりする危険が指摘されています。
介護
利用料が重し
介護保険制度では、介護サービス利用者の自己負担率を現行の一割から二割に引き上げることを検討しています。
当面、現役並みの所得(今年八月からは夫婦二人で年収約五百二十万円以上)がある高齢者に限定する方向ですが、範囲拡大のおそれもあります。医療改悪法では、七十歳以上の「現役並み所得者」の窓口負担を今年十月から三割に引き上げます(現行は二割)。自民党は、これとの「整合性を取る」などとしています。
厚労省の調査でも、実際に利用されている介護サービスは、保険で利用できる上限(支給限度額)の四―五割程度にとどまっています。利用料が重しになって、限度額いっぱいまでサービスが利用できない人が多く生まれています。自民党の検討案は、ますます高齢者を介護サービスから遠ざけるものです。
生活保護
母子加算を廃止
生活保護費では、さまざまな削減案が検討されています。保護基準の見直し、母子加算の廃止、自宅などを担保に生活資金の融資が受けられる「リバースモーゲージ」制度の活用、医療扶助の国民健康保険への繰り入れなどです。
保護基準の見直しは、現在地域別に六段階に分かれている基準を、物価などの地域特性を反映し、基準設定を「見直す」としています。また、多人数世帯や単身世帯は基準が高いとして、引き下げをねらっています。
「リバースモーゲージ」制度とは、生活が困難な人が居住用の不動産を持っていた場合、不動産を担保として生活資金を借りるという制度です(二〇〇二年度に整備)。この制度の利用を優先させ、できる限り生活保護を適用させないようにしようとしています。
さらに、生活保護費の50%以上を占める医療扶助を国民健康保険に繰り入れる案が検討されています。昨年の生活保護に関する国・地方協議会で、厚労省がこの案を提案したときに、国保の保険者である地方側は猛反発しました。医療扶助の国保への繰り入れは、赤字を抱えている国保財政をさらに追い詰めるものです。
雇用保険
国庫負担を削減
雇用保険では、失業給付の国庫負担(現在25%)の引き下げを狙います。
労働者が失業したときに受ける失業給付などの財源は、労働者と事業主が負担する保険料や国庫負担でまかなわれています。国庫負担の削減は、保険料の値上げにつながるものです。