2006年6月29日(木)「しんぶん赤旗」

郵便局の集配廃止

暮らしの支え 壊される

主要局まで30キロ・高齢者への目配り届かない


 集配郵便局の統廃合計画にたいして、地方から不安や見直しを求める声があがっています。


町あげて反対していく

党調査団 町長・区長と懇談 奄美

 鹿児島県奄美群島は、九つの郵便局の集配局が廃止される計画です。日本共産党の調査団は二十八日現地に入り、首長や関係者と懇談しました。

 奄美群島で集配局の廃止が明らかになっているのは、大島小湊(奄美市名瀬)と篠川、押角、西阿室、諸鈍、実久、池地、与路(瀬戸内町)、早町(喜界島)の九郵便局。奄美群島では、十二市町村議会のうち八自治体が集配局再編計画の撤回を求める意見書などを可決しています。

 廃止対象の九郵便局のうち七局が集中する瀬戸内町。義永秀親町長は党の調査団に対し、郵便局の配達員が地域のお年寄りの見守りや災害時の情報収集など地域に密着した重要な役割を果たしていることを指摘。「単に郵便の遅配などにとどまらない重大な影響を与える」と訴え、「超党派、町をあげて反対の声を強くあげていく」と語りました。

 奄美大島の離島・請島(うけじま)の池治集落の福島英起区長は「この集配局廃止を皮切りに、離島の郵便局の人員削減、統廃合とすすんでいくんでしょうか」と心配顔。「島にある公共施設といえば、学校と診療所と郵便局だけ。どれも島の支えだということを分かってもらいたい」と訴えました。

 調査には田村貴昭衆院比例候補、山口はるき鹿児島参院選挙区候補、吉井英勝衆院議員の山下唯志秘書、赤嶺政賢衆院議員の土方准子秘書、地元議員らが参加。田村衆院比例候補は「離島の実情を地方議会、国会に届け、みなさんとともに運動を進めていきたい」と語りました。

半分近く廃止 募る不安 鳥取

 二十八日発表された集配局の統廃合計画によると、鳥取県では集配局五十局のうち半分近い二十四局が集配廃止になり、新たに岩美、北栄、南部、伯耆、江府の五町で集配局がなくなります。「統括センター」は県内で四つだけになります。同県は中山間地域が多く、配達の遅れや高齢者への声かけなどのサービスが継続されるのか懸念されます。

 集配廃止されるある郵便局長は「郵便業務以外でも高齢者への声かけや災害時の状況確認、子どもの安全確保なども自治体と協力してボランティアでやってきました。これらのサービスも維持されるのか」と不安を語ります。

 また別の郵便局長は「郵便局は社会的・公共的に重要な役割があります。特に山村地域は都会のように近くに何でもあるわけではありません。サービスが後退しないように必要な手だてをとってほしい」と言います。

 日本共産党の田中克美岩美町議は「集配廃止で配達地域が広がれば、これまでのように臨機応変の対応ができず、サービスの低下は避けられません。また郵便局そのものの廃止への第一歩ではないか」と指摘します。

 鳥取県議会では「集配郵便局のユニバーサルサービスの確保を求める意見書」を可決。県内の半数以上の自治体が「集配局廃止計画の中止を求める意見書提出」の陳情を採択または趣旨採択しています。

北海道 貯金・保険にも影響

 北海道では、四百四十五集配郵便局のうち、約36%に当たる百六十局で集配業務が廃止されることになります。

 天塩町では町内の天塩(てしお)、雄信内(おのぶない)両局が隣町の幌延局に統合され、町内の集配業務と貯金・保険の外務事務もなくなります。

 雄信内地区で酪農を営む、男性(72)は「農業をはじめ地域の産業がどんどんきびしくなるなか、郵便局までこんな状況になるとは。どうやって地方で暮らしたらいいのか。国は抜本的に計画を見直してほしい」と話します。

 町内の尾田(おだ)、生花(せいか)両局が廃止対象となる大樹(たいき)町。生花局を利用していた人は「土・日も郵便物をだすことができたが、廃止になると不便になる。大樹局から三十キロの地域なので地元の配達員は必要です」と話します。

 尾田地区に住む人は「郵便局で年金をおろす時、職員から『いつでも電話ください』と言ってくれるので利用している。大樹局から十五キロも離れているところへ来てくれるのか心配です」と不安を語りました。

 今回の計画発表について伏見悦夫大樹町長は「再編計画は理解できない。撤回のためこれからがんばりたい」とコメントしています。


解説

「利便性守る」の約束 政府・公社は破るのか

 「郵便局は地域の宝もの」と慕われるように、郵便局が地域社会の住民と結びついて果たしてきた役割は、かけがえのないものがあります。それが今、根本から掘り崩されかねない重大な危機に直面しています。

 今回の再編計画の柱となる郵便局の集配業務の廃止。ひとことでいえば、「まちの身近な郵便局員さんがいなくなる」ということを意味します。

 とくに中山間地が多い過疎地では、郵便局は地域の中核としての重みを持っています。そうした地域で、郵便局員が高齢者に郵便を届けたり、集金業務をしながら声をかける「ひまわりサービス」には大きな期待が寄せられています。二年前の新潟県中越大震災の時でも、ライフラインの断たれるなかで、郵便物を届け被災者を励ました郵便局の対応は光るものがありました。

 これらサービスは、地元に密着した郵便局員がいてこそ成り立つものです。ところが集配業務の廃止は、そうしたきめ細かなサービスを奪いかねないことになります。

 だからこそ、集配業務の廃止が検討される郵便局を抱える自治体からは、「サービスの低下、地域社会の崩壊につながる」と不安と反対の声がわき起こっているのです。

 郵政公社は今回の再編計画について「国民の利便性は守る」と説明。国会決議や答弁も尊重するとしています。

 しかし実際に今回の再編計画で起ころうとしている問題は、国会での答弁―「国民の利便性が万が一にも支障が生じないように適切に対応する」(竹中平蔵郵政民営化担当相=当時=)に照らしてどうなのか。

 「国民共有のセーフティーネットである郵便局のネットワークと現行水準の維持」(郵政民営化法案の国会の附帯決議)はどこへいくのか。先の国会審議で小泉純一郎首相が「(郵便局が)統廃合されてサービスが低下する場合もある」と言明したことが現実になろうとしています。

 日米の金融資本の要求を背景にした郵政民営化。国民にとって「百害あって一利なし」というその正体はいよいよはっきりしてきました。(矢守一英)

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