2006年7月2日(日)「しんぶん赤旗」
主張
1048局集配廃止
公約違反の計画は撤回を
郵政民営化について小泉首相は、「民間人に任せた方がよりよいサービスが展開される」と国会や総選挙で何度も国民に説明しました。
その公約が早くも投げ捨てられようとしています。郵政公社が民営・分社化(来年十月)を準備するリストラ策として発表した、「集配」郵便局の統廃合計画です。
標的は地方の過疎地域
集配局は窓口だけでなく郵便物の集配、貯金・保険の集金など外務も担う文字通り地域の拠点郵便局です。全国二万五千の郵便局のうち四千七百が集配局となっています。
計画によると、集配局の二割以上に当たる千四十八局の集配・外務を今年九月から順次廃止し、窓口業務だけの無集配局に格下げします。
標的は地方の過疎地域です。
大都市で廃止対象になっているのは大阪で三局(集配局の3・9%)、東京五局(4・7%)などわずかです。一方、地方は鳥取二十四局(48%)、沖縄三十局(46・9%)、山梨二十二局(46・8%)、高知二十七局(38%)、北海道百六十局(36%)などばっさり切り捨てる計画です。
廃止した集配業務は、新たに「統括センター」と「配達センター」と呼ぶ拠点局に集約します。
地域との距離は遠くなり配達の遅れや回数の減少は避けられません。時間外窓口は集配廃止局、配達センター局ともに閉鎖するとしています。過疎地の高齢者の安否確認などの住民サービスは「引き続き実施する」と公社は言います。しかし、そんな体制の保障はありません。
集配郵便局は、大災害が起きたときに救援・復興の地域拠点として大きな役割を果たしてきました。
郵政研究所(現在の郵政総合研究所)が次のようにリポートしています。阪神大震災で集配局は発生直後には救援物資の配達や安否の確認、復興期には被災者の転居先追跡、仮設住宅の訪問で住民を支えた。この経験から、集配局を中心に自治体と郵便局が災害時の協力協定を交わすなど、とりくみを発展させている。災害で力を発揮してきたのは、身近な集配局の外務職員だった―。
集配を廃止する郵便局は大幅に人員を減らします。例えば鳥取県の最東部に位置する岩美町の岩美郵便局は、局長を含めて二十四人の職員で集配・外務や窓口の業務を支えています。それが、今回の計画によって集配・外務職員が配転となり、職員数は五分の一の四、五人に縮小します。
これでは、災害発生時に期待される役割も果たせなくなります。
住民サービスの低下は明白です。
集配廃止で収入源が窓口手数料だけになると、採算が悪化して郵便局の存続自体が危うくなります。
郵政民営化は、「構造改革」の看板である「官から民へ」の象徴です。今回の事態は、「民間に任せればすべてうまくいく」という政府の主張が、国民をあざむく議論だということを証明しています。
首相と竹中大臣の責任
竹中郵政民営化担当相は昨年の郵政国会で、はっきり答弁しています。「過疎地についてはもちろん現状を維持する」(八月五日)。「特に過疎地の郵便局はきっちりと間違いなく維持される」(七月二十一日)
小泉首相と竹中大臣は口をそろえて、「万が一にも国民の利便に支障が生じないようにする」と繰り返し国民に公約しています。
集配局の統廃合計画が公約に反することは明らかです。政府、とりわけ小泉首相と竹中大臣には、計画を撤回させる大きな責任があります。