2006年7月3日(月)「しんぶん赤旗」

与党歳出削減案

失政のツケ 国民に

増税誘導へ福祉切り捨て


 小泉内閣は七日にも経済財政運営の方針となる「骨太方針2006」を決定します。次期政権にも小泉流の「改革」路線を継承させようという狙いです。自民、公明の与党は、これに向けて歳出削減案をとりまとめましたが、財政破たんのつけを国民に押しつける小泉「改革」の本質が浮き彫りになっています。(小林俊哉)


国民の生活お構いなし

 与党が決めた歳出削減案は、机上の数字合わせから出てきたものです。二〇一一年度に国と地方のプライマリーバランス(基礎的財政収支=公債収入を除いた歳入と、公債の元利払いを除いた歳出)を黒字にすることを大前提にしています。国民の生活がどうなるかはお構いなしに、その目的達成のために徹底して歳出を削り込もうというやり方です。

 今後五年間に十六・五兆円の収支改善が必要だとして、そのうち十一・四兆―十四・三兆円を歳出削減でまかない、残り二兆―五兆円は増税で対応しようとしています。

 歳出削減で標的にされているのは、国民生活に影響が大きい社会保障での一・六兆円減額など、国民のくらしを直撃するものです。小泉政権五年で社会保障の連続改悪や庶民増税で十三兆円もの負担増に続いて、歳出削減による負担増が襲いかかるのです。

 さすがに与党内からも「これでは来年の参院選がたたかえない」との不満の声があがりました。自民党と一緒に歳出削減案を決めた公明党は「公明党の主張が反映され、『現役世代の負担が過度のものにならない』制度の検討や『国民の理解を前提としつつ』歳出削減を行う文言が追加された」(公明新聞六月二十七日付)と、削減に“幅”を持たせたと宣伝しています。

 しかし、いくら「国民の理解を前提」といっても、大負担増の大枠そのものを変えるものではありません。むしろ「骨太の方針」に盛り込むことで、今後五年間の歳出削減案の具体化を積極的に行おうとしています。

 もともと、プライマリーバランスを崩したのは自民党政治が赤字国債を発行し続け、財政を破たんさせたのが原因です。その財政破たんを国民向け支出を削ることで建て直そうというのは、二重に国民に犠牲を強いるものです。

財政破たん責任を不問

 歳出削減のホンネは、小泉純一郎首相が、六月二十二日の経済財政諮問会議で率直に語っています。

 「歳出削減をどんどん切り詰めていけば、やめてほしいという声が出てくる。増税をしてもいいから必要な施策をやってくれという状況になってくるまで、歳出を徹底的にカットしないといけない」

 歳出削減の名で国民生活に大負担増をかぶせ、もうやめてくれと国民が悲鳴をあげるところまで切り捨てたあとに、今度は消費税など大増税をかぶせるというシナリオです。

 すでに歳出削減を口実に消費税増税を当たり前のように描き出す議員が横行しています。

 自民党の中川秀直政調会長は「最大でも1―2%の(消費税)増税ですむ」と述べていますが、同党の税制調査会幹部は、公然と消費税率10%の必要性を唱えています。なにより自民党は、二〇〇五年衆院選で、消費税を含めた税制の「抜本改革」を公約しています。

 歳出削減も増税も、「財政再建」を口実として議論されていますが、政府・与党の議論では、大型公共事業と軍事費のムダづかいを重ね、大企業・大資産家への大減税を続け、日本を借金まみれにしてきた自民党政治の責任がまったく不問に付されています。

 自らの失政のツケを、国民にまわすことを「改革」と称する―ここに「改革」の正体があります。


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