2006年7月5日(水)「しんぶん赤旗」

ダイオキシン汚染は解決したの?


 〈問い〉 以前、大きな問題になったダイオキシン汚染は解決したのでしょうか? 焼却炉でいまもビニール類を燃やしているそうですが。(大阪・一読者)

 〈答え〉 ダイオキシンは、毎年の排出量は改善されましたが、環境中の蓄積はつづいています。

 廃棄物焼却によるダイオキシン問題は、1967年にオランダであきらかになって以来、EU諸国や米国、WHO(世界保健機関)などで基礎的な研究がおこなわれ、さまざまな対策(排出規制やリスク管理など)がとられてきました。しかし、日本では90年代後半に埼玉県所沢市周辺の産廃処理施設による高濃度汚染が大問題となり、ようやく99年7月、「ダイオキシン類対策特別措置法」がつくられ(00年1月施行)、人体への摂取目安である耐容一日摂取量や環境基準、排出・濃度基準が決められました。

 その結果、燃焼状態の悪い焼却炉の多くは廃止され、環境省は、大気中へのダイオキシン類の排出量は97年の約8キログラムから03年には20分の1の400グラムに減り、大気中の濃度も低下したとしています。

 しかし、自治体に届けられ、公表される排ガス中ダイオキシン類濃度は、年1回の測定を事業者みずからがおこなえばよく、燃焼状態のよいとき=ダイオキシン濃度が低いときにおこなうことができるため、かならずしも実態を反映していません。

 国際会議で示された各国の大気中のダイオキシン濃度(04年)は、ポルトガルなどEU南部の国を除き、EU諸国や米国では都市部で0・01〜0・02、農村部では0・01、日本では全国平均が0・06と、3〜6倍になっています。焼却炉の周辺や都市によっては0・1〜0・2に迫る地域もあり、決して安心できません。(単位はpg―TEQ/m3)

 90年当時、日本の大気中ダイオキシン類濃度は諸外国に比べ高かったのですが、その傾向はいまも変わっていないとみられます。

 米国環境保護局(EPA)は、ダイオキシンの慢性毒性には、それより以下であれば生物的影響がないといえる値=閾値(いきち)がないとしています。WHOやEUは、耐容一日摂取量を日本よりきびしい数値としています。

 多額の費用をかけて焼却炉などを最新鋭化しても、塩化ビニルをはじめプラスチックごみの焼却量がふえ、焼却施設の事故がくり返されたりするようでは、ダイオキシンの発生量を減らすことはできません。

 塩化ビニルを燃やさない、燃やすごみを大幅に削減する抜本策を最優先にすることを基本とすべきです。(岩)

 〈参考〉『スッキリわかるごみ問題』(新日本出版社)

 〔2006・7・5(水)〕


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