2006年7月7日(金)「しんぶん赤旗」

「新型交付税」

“簡素化”で削減を狙う

竹中懇談会提案 知事会など批判


 竹中平蔵総務相の私的懇談会「地方分権21世紀ビジョン懇談会」(大田弘子座長)は三日に発表した報告書で、地方交付税の算定基準を抜本的に変更する「新型交付税」を提案しました。この案をめぐって全国知事会など地方六団体は「地方交付税の削減につながる」と強く反発しています。

 地方交付税は、地方自治体の財源を保障するための制度です。全国どこの地方自治体でも、必要な住民サービスを提供できるようにするため、(1)自治体間の財政力の差を調整する(2)標準的な行政サービスを自治体ができるようにする―ことを目的にしています。「国が地方に代わって徴収する地方税である」と位置づけられ、所得税、法人税、酒税、消費税などの国税の一定割合が基本的な財源です。二〇〇六年度予算は約十六兆円です。

支出減を徹底

 小泉内閣は、地方に対する国の支出を減らしつづけ、交付税を〇四年度から三年で合計五兆一千二百二十四億円も削減しました。この路線を徹底させ、地方への国の支出べらしを一層狙ったものが、「ビジョン懇談会」報告での提案です。

 地方交付税を「規律の緩みを生みやすい仕組み」などと、やり玉にあげ、“現在の算定方法は複雑であり、簡素化させる”として「新型交付税」の導入を唱えました。その内容は、▽〇七年度予算から人口と面積を基本として算定する▽現行の交付税を順次「新型」に変えていく▽今後三年間で「新型」は五兆円規模を目指す―などです。

サービス低下に

 この「算定方法の簡素化」の主張には、交付税削減の狙いがあります。現在の各自治体への配分額は、自治体間の行政コストの格差を是正するため、単純に人口や面積だけでなく、自治体の実態をできるだけ反映させるため、人口密度、高齢化の状況、寒冷地かどうかなどさまざまな基準から計算されています。そういう算定の要素を、人口や面積に「簡素化」した場合、人口が少なく、面積も狭い自治体は、どんどん交付税が切り下げられます。

 島根県の澄田信義知事は「単純に人口や面積では計れない…財政力の脆弱(ぜいじゃく)な自治体にとっては、住民サービスの低下に直結する恐れがある」(月刊誌『ガバナンス』七月号)と指摘。全国知事会の地方交付税問題小委員会は六月末、「『算定の簡素化』の議論のみが優先されているが…最低限の行政水準を国民に保証するという交付税制度の本質を損なうことがあってはならない」と批判しています。(松田大地)


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