2006年7月19日(水)「しんぶん赤旗」
主張
改定介護保険法
利用者・家族の負担も限界だ
改定介護保険法の影響で、利用者と家族から、「安心して介護が受けられない」との声があがっています。
昨年六月、自民党、公明党、民主党の賛成で成立した改定介護保険法は、国庫支出の削減を目的に、負担増・給付減を国民に押し付けるものでした。(1)施設の居住費・食費を保険から外し、全額自己負担とする(2)軽度(要支援)と認定された人にたいし、家事援助など介護サービスの利用を制限する(3)健康診査などの福祉事業を「地域支援事業」として介護保険に組み込み、国の財政支援を減らす―という大改悪です。
施設からの追い出し
これらが、昨年十月から段階的に実施され、今年四月には全面施行されました。
居住費・食費が保険から外され、全額自己負担になったのは、特別養護老人ホーム、老人保健施設、療養型施設の介護三施設です。
負担増が実施された昨年十月以降、介護三施設からの退所者が全国で少なくとも一千人を超えることが、自治体や医療団体の調査からわかっています(本紙七月六日付)。
政府・与党は、“在宅では食費や居住費は自己負担だから施設でも負担するのが当然だ”といって、施設利用者の負担増を正当化しました。しかし、実態は、施設利用者・家族の負担の限界を超えて大量の退所者を生み出しています。負担増のねらいが、“在宅との公平”にあるのではなく、施設からの追い出しであったことを示すものです。
要支援と認定され、これまで受けてきたヘルパーやデイサービスの利用が制限された人も悲鳴をあげています。サービスを削られたため、かえって状況が悪化し、介護度が重くなりかねません。政府は、“介護予防の重視”といって、家事サービスの制限を打ち出しましたが、実態にあわない認定によって、予防に逆行しています。
介護保険利用者の高齢者は、高い保険料を支払っています。しかも、ほとんどが年金からの天引きです。保険料はきびしく取り立てながら、サービスは安心して受けられない、施設からは追い出される。これでは、“保険あって介護なし”の事態に拍車をかけます。
政府は、民主党の強い要求を受けて、保険料の徴収開始年齢の引き下げも、今後検討する方向です。安易な国民負担増は、若い世代の雇用と収入が不安定になっていることからも、滞納や制度の空洞化すら招くことになり、やるべきではありません。
日本共産党は、改悪された介護保険法の影響から、高齢者と住民を守るために昨年九月には政府に緊急の申し入れを行いました。そのなかで、居住費・食費の自己負担拡大による影響が深刻であり、政府が実態調査を行うべきであると要求しました。
減免制度の確立を
日本共産党の申し入れを受けて、政府は都道府県に実態調査の依頼をしており、近くまとめる予定です。
介護保険制度は、二〇〇〇年の制度導入以来、低所得者が制度から排除される危険性が指摘されてきました。この四月には、三年ごとの二度目の保険料引き上げも実施されました。保険料と利用者負担増が重なります。低所得者が負担できずにサービスを利用できなくなる事態がいっそう深刻になります。
利用料・保険料の減免制度をはじめ、だれもが安心して介護をうけられるように、日本共産党は、みなさんといっしょに力をあわせていきます。