2006年7月22日(土)「しんぶん赤旗」
ソ連の崩壊は社会主義理論の破たんなの?
〈問い〉 最近読んだ本に、社会主義について、「『すべての生産手段をすべての人が共有する。それによって生まれた生産物もみなで共有する。そうして貧富の差のない平等な、公平な、幸せな社会が出来る』。美しすぎてめまいをおこしそうな論理です。しかし現実には、ソ連が七十四年間の実験で証明してくれたように、大失敗に帰しました」と書かれていました。どう思いますか?(東京・一読者)
〈答え〉日本共産党は、将来の日本において「生産手段の社会化」を展望しています。しかし、「すべての生産手段」を共有するとか「生産物もみなで共有する」と主張をしたことはありません。
ソ連の崩壊以後も、「資本主義万歳」といえないことは、国連機関さえ、「貧富の格差の拡大や南北問題は、資本主義のもとでは解決できない」という警告をしていることにも示されています。資本主義の利潤第一主義は、地球温暖化やオゾン層破壊、資源浪費など、人類の存続にかかわる問題をひき起こしています。
日本共産党綱領は、こうした弊害を乗り越えた社会主義社会をどのようにして実現するのかについて、「社会主義的変革の中心は、主要な生産手段の所有・管理・運営を社会の手に移す生産手段の社会化である」としています。「社会化」とは、工場の機械・設備などを、利潤追求ではなく社会全体の利益のために生産をおこなうことが可能な所有と管理運営の形態に変えることです(国有や公的機関の所有、協同組合化などさまざまな形態が考えられます)。「すべての人の共有」ではありません。
党綱領は、生産手段の社会化が「社会から貧困をなくす」だけでなく、「労働時間の抜本的な短縮を可能にし、社会のすべての構成員の人間的発達を保障する土台をつくりだす」ことや、「経済の計画的な運営によって、くりかえしの不況を取り除き、環境破壊や社会的格差の拡大などへの有効な規制を可能にする」と述べています。
「社会化の対象となるのは生産手段だけで、生活手段については、この社会の発展のあらゆる段階を通じて、私有財産が保障される」とも明記しています。個人生活にかかわる生産物は、当然のこととして分配されるのです。さらに農林漁業や中小商工業の分野では、長期にわたって家族経営などの形態での生産手段の私的所有が尊重されます。
旧ソ連では、スターリン以降の歴代指導者が、社会主義の原則を投げ捨てて、他民族への侵略と抑圧、国民の自由を奪う官僚支配の道へと進みました。この体制の崩壊が証明したのは、社会主義の失敗ではなくて、社会主義とは似ても似つかない人間抑圧型の社会は駄目だということです。
ソ連の崩壊後も、中国、ベトナム、キューバは、社会主義をめざす独自の路線を確立して、発展しています。(哲)
〔2006・7・22(土)〕