2006年7月25日(火)「しんぶん赤旗」
許可文書に上官サイン
米軍の虐待 組織的
イラク収容所 元兵士証言で告発
NGO報告書
【ワシントン=鎌塚由美】米国に拠点を置く人権監視NGO(非政府組織)「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」は二十三日、イラクで米軍が収容者に対して組織的な虐待・拷問をしていると告発する報告書を発表しました。
米軍は、イラク人収容者への虐待・拷問は、一部の不届き者の行為だとする「腐ったリンゴ」論を一貫して主張していますが、五十三ページの同報告は、兵士の証言を盛り込み、組織的な行動であると明らかにしています。
報告が取り上げる主な期間は、二〇〇三年から〇五年。バグダッド空港内の立ち入り禁止区域にある「キャンプ・ナマ」など三カ所の収容所の実態を取り上げました。
「キャンプ・ナマ」は、国際赤十字にも登録されていない「国際法違反」の場所だと指摘。同収容所で尋問を担当した米兵は、収容者を裸にする、暴行を加える、眠らせないなどの方法は上官から奨励されていたと語りました。同兵士によると、このような尋問手法を許可する文書のひな型があり、上官が許可の署名をする仕組みになっているといいます。この兵士は、「(上官の)署名のない文書は見たことがなかった」と述べています。
また、虐待・拷問の存在を指摘する報告が、バグダッドおよびワシントンの軍指導部に上がっていたにもかかわらず、なんら対応措置がとられていなかったことも紹介。
尋問方法に疑問を呈する兵士に対し、軍の弁護士は、捕虜の虐待などを禁じたジュネーブ条約が収容者には適用されないとうその説明をしていた例や、虐待を目撃した兵士が上官に口止めされていた例などが紹介されています。
「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」は、同報告で、虐待・拷問にかかわった軍情報機関の幹部はいまだに一人も起訴されていないとし、「下級兵士だけを対象とするのではなく、指揮系統にそった犯罪調査が必要だ」と指摘。また、米議会が超党派の調査委員会を設置し、組織的な虐待・拷問の実態を調査するように提言しました。