2006年7月29日(土)「しんぶん赤旗」
庶民大増税 なぜなぜ問答
住民税・所得税編1
Q 高齢者の住民税 こんなの上がったのは?
「えっ、なんでこんなに税金が上がっているんだ」。納税通知書や給与明細書を見た人たちから怒りの声があがっています。小泉自民・公明内閣の増税計画はとどまるところを知らず、「ポスト小泉」候補にも引き継がれようとしています。
暮らしを襲う庶民大増税について、問答形式で考えます。はじめは、「住民税・所得税編」です。いま大きな問題になっている高齢者への大増税などをとりあげます。
2つの改悪で
六月に届いた住民税の納税通知書を見て、多くの高齢者が驚きの声をあげました。税金が七、八倍や十倍以上に増えていたからです。「計算間違いではないのか」と、抗議や問い合わせの電話が一日に千本もかかった市役所が続出しました。
千葉市に住むAさん夫婦(夫七十四歳、妻七十一歳)も、「去年は四千円だった住民税が今年は約三万五千円で、九倍近くに増えた」といいます。
なぜ、こんなことになったのでしょう。二〇〇四年の国会で決められた二つの改悪が、今年度から住民税についても実施されたからです。
一つは、「公的年金等控除」の縮小です。
年金生活者の場合、税金の計算の基礎となる「所得」を算出する際に、年金額から公的年金等控除を差し引きます。六十五歳以上の場合は、最低でも百四十万円を引くことができたため、年金額の少ない人は非課税でした。この最低額が百二十万円になるなど、公的年金等控除の額が縮小されたために、年金は一円も増えないのに計算の上だけ「所得」が増えてしまい、その分税金が増えたのです。
もう一つは、六十五歳以上の高齢者に適用されていた「老年者控除」(住民税では四十八万円、所得税では五十万円)が廃止されたことです。
税金は、「所得」から基礎控除や配偶者控除などの各種控除を引いて「課税所得」を計算し、これに税率をかけて計算します。これまでは、各種控除を引くときに老年者控除も引くことができましたが、これが廃止されたために、その分だけ課税所得が増えてしまうのです。
Aさんの場合
Aさんの場合の計算は次のようになります。図を参照してください。
年金額は月二十三万円、年収は二百七十六万円です。昨年までは公的年金等控除が百四十四万円だったので、これを引いた所得は百三十二万円、さらに基礎控除三十三万円、配偶者控除三十八万円、老年者控除四十八万円、社会保険料控除十七万円余を差し引くとマイナスになってしまうため、住民税の所得割は課税されず、均等割の四千円だけでした。
これが増税によって、がらりと変わります。公的年金等控除が百二十万円に減り、老年者控除も廃止されたため、控除を引いた後の課税所得が六十七万八千円になり、税率5%で三万三千九百円。定率減税も半減されたため、定率減税をした後でも三万千三百五十七円、均等割をあわせると三万五千円以上になります。
「年金以外に収入はない。その年金も六月支給分から、物価スライドで月七百円くらい減った。去年はじめて所得税が四万円課税され、今年は介護保険料が二人で一万八千円も増えた。年金の手取りは減る一方。それなのに住民税まで九倍なんて」と、Aさんの怒りはおさまりません。(つづく)
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