2006年8月3日(木)「しんぶん赤旗」
CS放送「各党はいま」 志位委員長が語る
小泉政治、靖国問題について
日本共産党の志位和夫委員長は二日放送のCS放送・朝日ニュースター「各党はいま」に出演し、五年数カ月にわたる小泉政権の評価、靖国問題などについて朝日新聞の坪井ゆづる論説委員の質問に答えました。
小泉政治の “三つの破壊”
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――九月で終わる小泉政権をどう評価するか。
志位 小泉首相は、「自民党をぶっ壊す」といって登場しましたが、壊したのは、まずアジア外交でした。それから、国民生活―人間らしい労働、社会保障など暮らしの基盤を壊しました。もう一つ、憲法・平和を壊しました。この“三つの破壊”というものが非常な大きな汚点として残った内閣だと思います。
――小泉さんはワンフレーズ政治といわれたが。
志位 ワンフレーズといっても、イラクの大量破壊兵器問題での「フセインも見つかっていない」という発言が示したように、一つひとつは、その場その場を言い逃れ、取りつくろい、ごまかす内容でした。
理性的な目でそれを見るならば、どれも荒唐無稽(むけい)な言葉を綱渡り的に繰り出していくというやり方で、政治の質をうんと悪くしたと思います。
先日亡くなった橋本(龍太郎)元総理ともずいぶん論戦をたたかわせましたが、橋本氏は、立場が違ってもそれなりの論構えがあり、立論をしてきました。それにたいし小泉首相はまじめに論戦して、決着をつけようとする立場そのものがなかった。その点では、自民党が非常に退化した、政治的退廃が進んだ五年間だったと思います。
破たんした“靖国”派のシナリオ
――(昭和天皇が靖国神社へのA級戦犯合祀(ごうし)に不快感を示していたという)「富田メモ」についてはどう見るか。
志位 “靖国”派のシナリオの破たんだと思って読みました。侵略戦争を礼賛する“靖国”派の主張を見ますと、総理大臣の参拝をまず定着させる。つぎに三権の長とすべての閣僚に参拝させる。最後に天皇の参拝を実現する。そのことによって、侵略戦争肯定史観を日本の“国論”にしてしまおうということがシナリオだということをはっきりいっています。
この“靖国”派の要求に従って小泉首相は、参拝を繰り返してきた。これがこの間の経過でした。
ところが、肝心の(昭和)天皇自身がA級戦犯を合祀しているなら、参拝しないと言っていたということが事実として残っていた。昭和天皇は侵略戦争の最高責任者です。その天皇がA級戦犯についてこういう形で論じることにはそれ自体に深い矛盾があります。しかし、天皇の思惑がどこにあったにせよ、“靖国”派のシナリオが破たんしたことは事実です。そして“靖国”派のシナリオに従って参拝していた小泉首相の行動もいよいよ道理がたたなくなりました。
アメリカ側からの批判
――小泉さんは、アメリカと仲良くすれば他の国との関係もうまくいくといっているが。
志位 アメリカの側からも日本の靖国問題での対応では、困るという声があがっています。これには、二通りあると思います。
一つは、下院のハイド外交委員長のように、太平洋戦争をいまになって正当化するようなことをいうのはけしからんという、筋論での批判の流れです。もう一つは、アジアとまともに付き合えないような日本は、アメリカにとっても利用価値がなくなるという形になって、「日米同盟」にも深刻な影響が出てくる。
在日外交団の少なくない人々から、「日本は靖国問題でアメリカに負い目をおっている。そこで、他のことでは余計いいなりになるんだ」と。こうして米軍再編でも、牛肉の問題でもいいなりになる。こういう形で二重に国益を害しているという指摘が共通してあります。もともと日本の外交というのはアメリカいいなりの外交でしたが、そのアメリカいいなりの日本外交をさらに極端にまで異常にした五年間だったと思います。