2006年8月8日(火)「しんぶん赤旗」
主張
靖国神社
首相は参拝をやめるべきだ
小泉純一郎首相の任期中最後の終戦記念日となる八月十五日を前に、首相が終戦記念日の靖国神社参拝を強行するのではないかという懸念が広がっています。
小泉首相は、最新の小泉内閣メールマガジンでも「私は、総理大臣就任以来…毎年一度靖国神社に参拝しています」と、参拝の可能性を強くにじませました。過去の日本の侵略戦争を正当化する靖国神社への首相参拝は、靖国神社の戦争観(「靖国史観」)に政府公認のお墨付きを与えるものです。首相の靖国参拝は、断じてやめるべきです。
「靖国派」の破たん
靖国神社は、ただの宗教法人でも、戦没者追悼の施設でもありません。戦前、戦中、軍国主義の精神的支柱となり、戦後も、日本の侵略戦争を、日本の「自存自衛」の戦争、アジア諸民族「解放」のための戦争だったと賛美する「靖国史観」を世界に発信している運動体です。
小泉首相は自民党総裁選出馬にあたり終戦記念日の靖国参拝を公約し、八月十五日の参拝は見送ったものの、就任した二〇〇一年以来、五回にわたって靖国神社を参拝しました。
首相は「靖国神社の戦争観とは考えが違う」と言い逃れてきましたが、「過去の植民地支配と侵略」を反省する日本政府の公式見解ともあいいれない首相の参拝には内外の批判が集中しました。
日本がかつて侵略した中国、韓国とは首脳外交が完全に途絶する異常事態が続き、アジア諸国からも批判が噴出しています。国際社会の審判に完全に背を向ける靖国史観の実態が明らかになるなかで、首相の靖国参拝への批判は欧米諸国にも広がり、首相が頼みとするアメリカでも戦後六十周年の昨年、日本の戦争犯罪を再確認する決議が下院で採択されるなどしています。
靖国神社とこれに結びつく政治家、右派勢力など「靖国派」は、首相の靖国参拝を国策として毎年おこなうことを要求し、さらに衆参両院議長と最高裁長官の三権の長が参拝し、これに天皇を加えるというシナリオを描いてきました。ねらいは靖国史観を「国論」に押し上げることです。
こうしたなか、最近、昭和天皇の発言を記録した元宮内庁長官のメモで、極東国際軍事裁判で裁かれたA級戦犯を「昭和殉難者」として合祀(ごうし)した靖国神社の決定に天皇が強い「不快感」を示し、合祀以後は天皇の意思で参拝を中止していたことが明らかになりました。天皇の参拝で自分たちの戦争観を国論にするという靖国派のシナリオと目標の完全破たんを意味するこの新史料の公表は、靖国派の要求に従う首相の靖国参拝にいよいよ道理がないことを浮き彫りにしました。
日本共産党の志位和夫委員長は新史料が明らかになったさい、「首相が、みずからの間違った立場をすみやかにただし、靖国参拝中止の決断をすること」を求めました。新史料公表後、どの世論調査でも首相に参拝中止を求める声が高まっています。小泉首相は「それぞれの人の心の問題」などと言い逃れるのではなく、靖国参拝中止の決断を下すべきです。
平和の願いに背く
終戦記念日は「戦没者を追悼し平和を祈念する日」として設けられました。その日に首相が靖国神社を参拝し、靖国史観にお墨付きを与えることは、二度と侵略戦争を繰り返さないという国際公約も、国民の平和の願いをも踏みにじるものです。首相の靖国参拝は、どこからみても許されるものではありません。