2006年8月16日(水)「しんぶん赤旗」
遺族の思い踏みにじる
父は戦死 繰り返すな
首相の参拝に平和遺族会抗議
小泉首相が靖国神社を参拝した十五日、平和を祈る戦没者遺族らは「遺族の思いを踏みにじるな」「死者を政争の具にするな」と怒りの声を上げました。平和憲法の価値を考える集会も開かれました。一方、靖国神社境内は参拝客や右翼団体の集会などで騒然となりました。
平和を願い戦争に反対する戦没者遺族の会(平和遺族会)は、東京都千代田区の千鳥ケ淵戦没者墓苑で献花しました。平和遺族会は同日、「憲法九条を活かし、戦争のない世界にしよう」と題した声明を発表しました。
「毎年、ここに父親を探しにきます」。同会事務局長の上田美毎さん(65)はいいます。「父は西ニューギニアで死んだと、終戦の翌年に知らせが来ました。母が骨箱を取りに行くと、中には一片の板切れだけでした。召集後に生まれた私は、父を知りません」。上田さんは「首相の靖国参拝や憲法改悪の動きを見ると、このままでは孫の代に召集令状が届きかねない。同じ思いをする子どもをつくりたくない。遺族として平和を大事にしていく」と話しました。
「恥ずかしいねぇ」。鈴木キミさん(74)=東京都八王子市=は、小泉首相の靖国参拝を知り、怒りで震えました。兄三人を戦争で失いました。鈴木さんは硫黄島で死んだ兄が戦地から一時帰宅したときのことを忘れられません。「兄は『玉砕はいやだな』と小さな声で言いました。私は軍国少女に育てられていて、兄に何にも言ってあげられなかった」。涙を流しながら、「母は絶対に靖国神社に行かなかった。首相の参拝で遺族は喜ばない」と語りました。
嶋田祐広平和遺族会代表世話人は首相の靖国参拝について「戦没者を、遺族を、政争の具にするな。戦没者を思う遺族の気持ちを踏みにじるな」と語りました。
同会は声明のなかで、憲法九条を変えるのは「戦争で犠牲となった国内外の人たちを冒とくする裏切り行為」と批判。首相や都知事の靖国神社への公式参拝にも抗議しました。