2006年8月17日(木)「しんぶん赤旗」
靖国参拝 各紙が批判
「心の問題」では済まない
過去の過ち あいまいに
小泉純一郎首相の靖国神社参拝について、「産経」を除く大手全国紙と多くの地方紙は十六日付で、「6回に及んだ首相の靖国参拝は誤りだった」(「朝日」)、「首相参拝はこれでもう、終わりにしたい」(東京新聞)などとする批判の社説をいっせいに掲げました。
歴史観を問う
特徴的なのは、首相の参拝が、日本の過去の侵略戦争を正当化する靖国神社の歴史観、戦争観を政府として認知することにつながる点を突いていることです。
「参拝は靖国神社や展示施設の遊就館が伝える史観を追認する姿勢を内外に示す意味合いがあり、『心の問題』だけでは済まなくなる」(沖縄タイムス)
「靖国神社は、先の戦争を『自存自衛の戦い』と美化する歴史観を持つ」(北海道新聞)
「あの戦争を自存自衛のためであったとする、一方的な史観に立つ」(東京新聞)
信濃毎日新聞は次のように指摘しています。「その歴史観は、戦争の反省に立って出発した戦後日本の歩みと相いれない。そこへの首相の参拝は国際的には、日本が過去の歴史を反省していないあかしと受け取られる心配が大きい。中国、韓国などアジア諸国だけでなく、米国なども参拝に批判的まなざしを向け始めていることを軽視してはいけない」
高知新聞も「首相の靖国参拝は、過去の過ちと責任を認めた戦後日本の出発点をあいまいにし、指導者の責任をあやふやにしかねない」としています。
国益を損なう
小泉首相が十五日の参拝後の記者会見で、批判への「反論」として挙げた三点についても、各紙は厳しく批判しています。
「中国、韓国が反発しているからやめろという意見」への「反論」とした首相の第一の言い分については、「外交関係を悪化させ、国益を損なう行為は、国政の最高責任者だけに容認することはできない」(琉球新報)などと指摘しています。
「首相は、一つの問題だけを理由に首脳会談に応じない中国、韓国が悪いと主張している。では、たった一つの問題も解決できない首脳会談は開く意味があるか。詭弁(きべん)には詭弁で切り返されるだろう」(「毎日」)
「小泉首相の参拝はテレビカメラの前で『どうだ、中国の言いなりにならないぞ』と大見えをきる政治ショーのようにも見える」「靖国問題が障害になって日中、日韓の首脳対話が途切れているのは異常である」(「日経」)
「朝日」は日本国内での批判の広がりを指摘し、「首相は、こうした声をすべて中国や韓国に媚(こ)びる勢力とでも言うつもりなのだろうか」と疑問を呈しています。
A級戦犯問題
A級戦犯の合祀(ごうし)に関連して、「特定の人に対して参拝しているのではない」との首相の言い分には、「問題とされているのは誰を哀悼するかではなく、A級戦犯が合祀された場所に参拝するということなのだ。勘違いしないでほしい」(北海道新聞)などと批判。
「小泉首相は、『A級戦犯』について『戦争犯罪人であるという認識をしている』と国会で答弁している」「靖国神社に『犯罪人』が合祀されているとの認識なら、そこに参拝するということに、矛盾があるのではないか」(「読売」)
「無謀な戦争を引き起こして日本を国家滅亡の瀬戸際まで追い込んだ戦争指導者を合祀する靖国神社への首相参拝は内外の理解を得るのが難しい」(「日経」)
憲法に抵触
また、憲法違反との指摘に、「心の問題」「思想の自由」だとした首相の言い分には、「すでに外交問題となっている以上、首相の私的感情ではすまない」(「毎日」)などと、首相のすりかえに言及しています。
「憲法のこの規定は国家権力から個人の権利を守るためのもので、国家権力を持つ首相が何でも自由にできるということを定めているわけではない」(北海道新聞)
「首相の参拝は憲法が定める政教分離原則に抵触する可能性が高い。参拝を合憲とする判決はこれまで一つもない」(信濃毎日新聞)