2006年8月18日(金)「しんぶん赤旗」

主張

政治家宅放火

言論へのテロは許されない


 自民党元幹事長の加藤紘一衆院議員の山形県鶴岡市の実家と事務所が放火され全焼した事件で、犯人とみられる男は、東京の右翼団体幹部だったことが明らかになりました。

 犯行声明などはなく警察も犯行の動機などを聞けていない段階ですが、加藤氏の言動をとらえた政治テロと見てまず間違いないでしょう。

 民主主義は自由な言論があってこそ成り立ちます。言論、とりわけ国民に選ばれた政治家の言論を暴力で封じ込めようというテロ活動は絶対に許されません。力をこめて糾弾し、徹底捜査を強く求めます。

終戦記念のその日に

 犯行は加藤氏の実家と地元での政治活動の拠点となる事務所を狙って行われました。犯人は事前に下見していたことが明らかになっていますから、用意周到な計画で放火した可能性が大です。

 実家で暮らしていた加藤氏の高齢の母親はたまたま外出していて難を逃れました。まかり間違えば生命に危難が及ぶ恐れもありました。火災が隣家に累を及ぼす恐れもありました。放火を手段としてテロを企てた犯行の卑劣さは、批判して余りあるものがあります。

 見落とせないのは犯行が終戦記念日で、同日朝の小泉首相の靖国参拝に内外の批判が高まっていたその日の夕方を選んで行われたことです。加藤氏自身、この日の午前には首相の靖国参拝について「日本のアジア外交を壊した」とテレビなどで発言していました。テロがこの日を選んで、小泉首相の靖国参拝への批判を封じ込める特定の狙いで行われたと受け取るのは自然でしょう。

 政治家の言論を暴力で封じ込めようというテロは、いついかなるときでも許されませんが、とりわけ侵略戦争を反省し平和を祈念すべき終戦記念日に、侵略戦争を美化する首相の靖国神社参拝にかかわって行われたとみられることは重大です。

 というのも、侵略戦争に反対する自由な言論を、権力の弾圧や右翼のテロまで使って封じ込めたことが、戦前の日本を戦争と破滅の道へと突き進ます、原因のひとつとなったからです。自由な言論を保障することが、戦後日本の大切な原則となってきました。終戦記念日を選んで、侵略戦争美化の靖国参拝に反対する言動を封じ込めるために行われたテロは、侵略戦争の痛苦な体験から国民がくみ取ってきた教訓に二重三重に挑戦するものであり、断じて許されるものではありません。

 実際には戦後も、日本共産党に対するものを含め、政治家へのテロが繰り返されてきました。政治家に向けられたものではなくても靖国参拝がらみでは、参拝を批判した経済同友会関係者に銃弾が送られたり、A級戦犯合祀を批判した天皇発言をスクープした新聞社に火炎瓶が投げられたりしたことがあります。その点では今回の事件も、あらゆるテロを追い詰め許さない、新たなきっかけにしていくことが不可欠です。

異論許さぬ偏狭さ

 そのためには政治家などがテロや脅しに屈しないことや、警察がテロを犯罪として徹底して捜査することとともに、異なった考えを暴力を使っても排除する偏狭さを社会から一掃することが大切です。

 内外の反対をおして靖国参拝を繰り返し、中止すれば「中韓の批判に屈したことになる」と開き直ってきた小泉首相の、批判に耳を貸さない態度がそうした風潮に手を貸すことにならなかったか、改めて検証しなおしてみる必要もあります。


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