2006年8月30日(水)「しんぶん赤旗」
これまでの靖国訴訟の判決とは?
〈問い〉 6月23日に首相の靖国参拝の最高裁判決が出ましたが、同様の訴訟は6地裁で提起され、すでに多くの判決が出ていると報道されていましたが、岩手靖国訴訟以後すべての訴訟と裁判所判断を教えてください。(岡山・一読者)
〈答え〉 岩手靖国訴訟は、岩手県議会が「靖国神社公式参拝促進要請決議」の採択は違憲だとして、住民が県議会議長などを訴えた訴訟と、岩手県の公費から靖国神社への玉串料支出は違憲と訴えた玉串(たまぐし)料訴訟があります。盛岡地裁は合憲としましたが、1991年1月、仙台高裁は政教分離原則に反するという初の判決を下しました。
85年8月15日、中曽根康弘首相(当時)が靖国神社に参拝したことは違憲だとして提訴した大阪地裁での判決は原告敗訴でしたが、前述の仙台高裁判決は首相や天皇の靖国参拝は憲法の政教分離原則に違反するとし、大阪高裁も「違憲の疑いがある」と判断しました。
小泉首相の靖国参拝をめぐる訴訟は7件起こされ、これまで、各級裁判所で15の判決が出ています。重要なことは、首相の靖国参拝は憲法第20条3項の政教分離原則に違反するとした判決が福岡地裁、大阪高裁で確定している一方、靖国参拝を合憲とする判決(決定)は1件もないということです。
九州・山口訴訟では04年4月7日、福岡地裁が「首相の靖国参拝は職務の執行」であり、「宗教的活動にあたり」、憲法違反であると断じています。大阪2次訴訟でも、大阪地裁は私的参拝としましたが、05年9月30日、大阪高裁は、「首相の参拝は宗教的意義の深い行為」で、「国が靖国神社を特別に支援しているとの印象を与え」、違憲と判断しました。
他方、大阪1次訴訟では、大阪地裁が公的参拝としましたが、憲法判断は避け、大阪高裁、最高裁は、参拝の性格や違憲性の両方とも判断を回避。四国訴訟では、松山地裁、高松高裁とも、参拝の性格や違憲性について判断を避け、最高裁は上告を棄却。千葉訴訟では、千葉地裁、東京高裁、最高裁のいずれも憲法判断を避け、沖縄訴訟でも那覇地裁が、東京訴訟では東京地裁、東京高裁のいずれも、靖国参拝の性格や違憲性での判断を避けています。(平)
〔2006・8・30(水)〕