2006年8月31日(木)「しんぶん赤旗」
薬害肝炎
80年以降の責任認定
福岡地裁 国・企業に賠償命令
血液製剤フィブリノゲンやクリスマシンによってC型肝炎に感染させられた患者が国と製薬会社三菱ウェルファーマ(旧ミドリ十字)などに損害賠償を求めた薬害肝炎九州訴訟(第一陣)で、福岡地裁は三十日、国と製薬会社の賠償責任を認める判決を言い渡しました。全国五地裁で提起された訴訟で、六月の大阪地裁に続く判決です。
須田啓之裁判長は、国と製薬会社は遅くとも一九八〇年十一月までにフィブリノゲン製剤の適応を限定するか、緊急安全性情報を配布すべき義務があったとして、これを怠った過失と違法を認定し、原告十一人に総額約一億七千万円の賠償を命じました。大阪地裁判決では、国について八七年四月、製薬会社については八五年八月以降の投与について責任を認めていました。
八尋光秀弁護団代表は「大阪地裁より法的責任を一歩進めた」とのべ、「国・企業は二十六年間も責任から目をそらし、ほおかむりしてきた」と批判し、早期全面解決をめざすとのべました。
判決は、一九七八年には米国FDA(食品医薬品局)のフィブリノゲン製剤の承認取り消しが公示され、当時の知見でも有効性に疑問が生じていたと指摘。国と企業はこの時点で調査・検討すべきであったとしました。
全国原告団代表の山口美智子さん(50)は「これ以上解決を引きのばすのは、私たちの命を奪うことです」として、国は謝罪と被害回復、治療体制の確立など一刻も早い解決に取り組むべきだと求めました。
判決は、クリスマシンについては請求を認めませんでした。原告は「全員救済に向けて歩んでいきたい」とのべ、弁護団は「高裁・地裁のどこかで早い時期に乗り越えたい」と決意を込めました。