2006年9月2日(土)「しんぶん赤旗」
ビラ配布禁止掲示 どう考える?
〈問い〉 最近、私が入居したマンションにビラ配布禁止の掲示があります。管理組合で話し合いたいと思っていますが、言論の自由、政治活動の自由と、住民の安全等との関連をどう考えたらいいのでしょうか?(神奈川・一読者)
〈答え〉 マンション住民が安全に暮らしたいという願いと、言論、政治活動の自由を尊重することとは、当然両立できるものです。
マンションの多くは、建物ができた時から「ビラ・チラシお断り」「チラシなど無断立ち入り禁止」などの掲示がされています。管理組合で議決して同種の掲示をしているところもあります。
しかし、そこにはよく考えなくてはいけないことがたくさんあります。まず、外部の人が来てマンションの集合ポストなどにビラ配布をする行為がただちに居住者の安全等を侵害するというものではありません。警察が住民の不安を利用し、ビラ配布に対し安全を侵害するとみなした防犯対策を奨励していることも問題です。
政党や諸団体の政策や活動を知らせるビラの配布は、何よりも憲法の保障する言論・表現、政治活動の自由として最大限に尊重されなければなりません。
それは、国民が政治的意思を形成するうえで重要な媒体です。政治活動ビラは「民主主義社会の根幹を成すものとして…商業的宣伝ビラの投函(とうかん)に比して、いわゆる優越的地位が認められている」との判決もあります(東京地裁八王子支部、04年12月16日判決)。ですから、政治活動ビラの配布に不安や迷惑を感じる人も、政治活動を保障するため、ビラ配布を認めることが大切だといえるでしょう。
同時に、居住者にとって配布されたビラを読むのは、知る権利を実現することです。管理組合が、ビラを読みたいという居住者の意思を無視して配布を制限することはできません。
実際にビラ配布を一切禁止すると、どんな問題が起こるでしょうか。東京のある管理組合で「ビラの一切禁止」の掲示が問題になりました。そこでは、議論の結果、自治体の断水工事や電気会社の欠陥製品対応のお知らせが届かなくなれば、「生活に不便だから配布一切禁止はダメ」「配布は認めよう」と合意し、さらに「『このビラはよい、政党のビラは悪い』などと管理組合で一般的に選別することはできない。ビラを読む・読まないは居住者が決めることだ」と一致、掲示内容を「風俗関係の広告物は厳禁します。防犯のため不審者は警察に通報します」に変えました。
管理組合は、政治活動の自由と居住者の知る権利を保障しつつ、安全や防犯対策をすすめることが必要だと考えます。(岡)
〔2006・9・2(土)〕