2006年9月6日(水)「しんぶん赤旗」
西大門刑務所歴史館で志位委員長語る
韓国マスコミとの一問一答
志位委員長は五日午後、ソウル市内の西大門刑務所歴史館を見学後、韓国マスコミのインタビューに応じました。その一問一答はつぎの通りです。
――歴史館をご覧になった感想はいかがですか。
志位委員長 日本帝国主義による苛烈(かれつ)な植民地支配の暴虐非道な実態を痛感しました。同時に、それに勇気をもって立ち向かった朝鮮の愛国者たち、そのたたかいの力強さということを感じました。
朝鮮の“歴史的同志”への敬意と追悼の気持ちで
――訪韓したら、ここに来ようと思った理由は何ですか。
志位 私にとって今回が初めての訪韓ですが、この場所にまず足を運ぼうと考えた理由は二つあります。
一つは、日本帝国主義の植民地支配の野蛮な弾圧、拷問、処刑、それに抗してたたかい抜いた朝鮮の愛国者に心からの敬意と追悼の気持ちを表すためです。
私たち日本共産党は、一九二二年に党を創立しましたが、党をつくった当初から朝鮮の愛国者とともに植民地支配に反対をつらぬき、朝鮮独立のたたかいに連帯してたたかった歴史をもっていることを誇りにしています。そういう党を代表して、私は、この場で、私たちのいわば“歴史的同志”に対して敬意と追悼の気持ちをのべたいと思います。
21世紀の日韓両国民のほんとうの友好を願って
志位 同時に、二十一世紀の日韓両国民の本当の友好を願って、この場にきました。日本にとっては、これは恥ずべき過去ですが、誤った過去に正面から向かい合ってこそ、アジアに本当の友人を得ることができると私は信じております。日本国民がこの歴史を直視して、これに正面から向かい合って、アジアの人たちとほんとうに心が通じ合う友人になっていく、そのことを願ってきました。
私は、さきほど館長さんから、毎年、西大門刑務所歴史館に多くの日本人が訪れていると聞きましたけれども、ソウル、韓国を訪問する日本人は、だれでもこの歴史館を訪れることが必要だと訴えたいと思います。
ここには、日本国民と韓国国民が共通の認識にすべき歴史の重い事実があります。それをしっかり共有してこそ、二十一世紀に、この地域の平和と安定は築けると、そう思ってまいりました。
日本の首相の靖国参拝問題について
――過去を直視したうえでの未来志向というお考えを述べられたと思いますが、日本の外交が中国、韓国を軽視してアメリカ一辺倒ではないかという憂慮があります。また、小泉首相が八月十五日に靖国神社を参拝されましたが、つぎの首相になる確率が高いといわれる方も、参拝しないとはおっしゃっていません。これに対する日本共産党の立場をお話しください。
志位 私たちは日本の首相が靖国神社に参拝するというのはどういう意味をもっているのかということを追及してきました。靖国神社というのは、戦没者を追悼する施設ではありません。天皇のために「名誉の戦死」を遂げたと「認定」された人を顕彰する施設です。すなわち、「日本の戦争は正しかった」「植民地支配は正しかった」――こういう間違った歴史観にたった存在です。それは遊就館にもはっきり現れています。この軍事博物館の展示物を見ますと、日清・日露の戦争、中国侵略戦争、太平洋戦争、そのすべてが、「アジア解放の正義の戦争だ」と描かれています。ですから私たちは、ここに参拝するということは日本政府の公式の言明にも反して、侵略戦争や植民地支配を肯定する神社の立場に政府としての公的な認知をあたえることになるとして、強く反対してきました。
つぎの日本の首相に、だれがなるにせよ、そしてその個人としての歴史観がどういうものであるにせよ、この歴史に逆行する行為をきっぱりやめるべきです。このことを、私たちは強く要求しています。
韓国の政界の全体と交流の道を開きたい
――韓国の政治指導者と会ってどういうお話をなさりたいとお考えでしょうか。
志位 今回は、アジア政党国際会議に参加するために訪韓することになったわけですが、この機会に、韓国の国会に議席をもつ五つの政党のリーダーを訪問し、韓国の政界の全体と交流の道を開きたいと思っています。そこでは歴史の問題や北東アジアの平和の体制の問題などについても、いろいろな意見が交わせたらと願っています。
歴史問題、竹島(独島)問題について
――独島問題、教科書問題など、歴史問題について、ご意見をお聞かせください。
志位 いわゆる歴史問題として、韓国で問題となっているのは、靖国問題、教科書問題、「従軍慰安婦」問題、そして独島とみなさんが呼んで、私たちは竹島と呼んでいる島をめぐる問題、四つの問題が焦点となっています。
靖国問題については、私たちの立場はさきに述べた通りです。歴史をわい曲する教科書の問題については、私たちは、(日本政府は)検定合格のはんこを押すべきではないということを強く主張しています。「従軍慰安婦」の問題については、日本の責任を認めた一九九三年の官房長官の談話があります。にもかかわらず、日本政府は国としてのきちんとした措置をとっていません。私たちは、国としての責任ある措置が必要だと主張しています。
そして、最後の問題だけは、違った事情があります。私たちは、この問題について、一九七七年に見解を発表しておりまして、この竹島(独島)の領有権を日本が主張することには、歴史的な根拠があると、そのなかでのべました。同時に私たちは、この島の(日本への)編入がおこなわれたのが一九〇五年(二月)であった、この一九〇五年というのは、日本が韓国を武力でもって植民地化していく過程です。すでに韓国の外交権は奪われていました(一九〇四年八月、第一次「日韓協約」)。ですから、私たちは、そのことも考慮して、韓国の主張もしっかり検討する必要があると考えています。
私たちは、この問題は解決までは一定の長い時間がかかると思いますけれども、これは日韓両国の間で係争問題になっている問題ですから、解決に向かって一歩一歩でも進むことが必要です。これはみんなが願っていると思います。ですから、私たちは、日本と韓国が、双方の持っている歴史的事実をつき合わせて、まずこの島をめぐる歴史的認識を共有するという共同作業が必要ではないか、共同研究が必要ではないかと考えています。