2006年9月7日(木)「しんぶん赤旗」

主張

偽装請負「通達」

“使い捨て”の根絶へ力あわせ


 厚生労働省が、「偽装請負の解消に向けた当面の取組について」という通達を、都道府県労働局長に出しました(九月四日)。

 安い賃金で労働者を工場に送り込み働かせる「偽装請負」が、大企業の製造現場を中心に、横行しています。未来ある若者をモノ扱い同然で使い捨てにしている現状を放置できません。

職安法や派遣法に抵触

 通達は、製造業大企業の「偽装請負」の事実を認めています。「契約の形式は請負等とされているものの、発注者が直接請負労働者を指揮命令するなど労働者派遣事業に該当するいわゆる偽装請負が少なからず見られる」。

 請負は、発注大企業が請負労働者を直接指揮することはできません。実態は派遣でありながら、形は請負を装うのが「偽装請負」です。

 厚生労働省は通達で「偽装請負」が「職業安定法及び労働者派遣法に抵触する違法行為」としました。

 職業安定法第四四条は、許可を受けた場合を除き、人貸しの労働者供給事業を禁止しています。許可も受けず、労働者を工場に送り込むだけの偽装請負は明白な職業安定法違反です。違法な人貸しは、請負会社も発注企業も、一年以下の懲役か百万円以下の罰金がつく犯罪です。

 厚生労働大臣の許可を受けた人材派遣は、労働者派遣法で認められています。しかし、製造業の大企業は、許可のいらない請負という形をとって、実態としては、許可のいる人材派遣を行っています。これは、労働者派遣法に抵触する違法行為です。

 日本共産党は、偽装請負の違反行為を根絶するよう、国会で追及してきました。三年前には、小池晃参議院議員が、カメラメーカー・ニコンの熊谷工場で請負として働き、過労自殺した男性の裁判をめぐる問題をとりあげ、偽装請負への規制を徹底して強化すべきだと迫りました。

 厚生労働省は、「派遣法違反だった」と認め、指導の強化を約束しました。昨年三月には、東京地裁が、形は請負でも実態は派遣であり、ニコンに使用者責任があると認めました。

 大企業は、本来直接雇用すべき労働者を、派遣や請負という不安定な雇用でコスト削減をはかってきました。大企業が請負の形をとるのは派遣法による派遣期限後の直接雇用申し出の義務を避けるためです。

 政府はようやく、重い腰をあげましたが、犯罪行為である偽装請負を根絶するまで徹底してとりくむべきです。

 製造業の構内請負は、一九八五年の労働者派遣法の成立以来、急増しています。厚生労働省の推計(二〇〇四年)でも八十七万人です。九〇年代後半から、製造大企業が、正社員を大量の請負に置き換えてきたからです。

 短期契約、低賃金で働かされる請負の広がりは、日本のものづくりの火を消すことになりかねません。製造現場への請負拡大をやめるべきだと、日本共産党は国会でも求めてきました。

直接雇用を求めて

 厚生労働省は、二〇〇七年度概算要求で、「製造業の請負事業の適正化及び雇用管理の改善の推進」を要求しています。

 偽装請負を告発してきた労働者と労働組合のたたかいと日本共産党の追及で、請負から直接雇用をかちとる動きが出ていることは快挙です。

 通達も活用して、偽装請負を告発し、大企業に社会的責任をはたさせていきましょう。


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