2006年9月7日(木)「しんぶん赤旗」
障害者自立支援法 本格実施前に
各地で軽減措置
共産党も提案・要求
自立支援法による障害者の大負担増が十月から本格実施されるのを前に、独自の支援策をとる自治体が全国に広がり、九月地方議会で予算化が予定されています。障害者と家族、日本共産党の運動が実ったものです。
減免制度を実施へ
高知・高知市
高知市は五日、障害者自立支援法の利用者負担の激変を緩和するための措置として、市独自の利用者減免制度を今年十月から実施する補正予算案を明らかにしました。
制度は、一割負担の利用料上限額を今年から二年半の限定で、その三分の二ないし三分の一を減額するもの。このため一般的所得世帯の場合では、三万七千二百円の利用料が八千二百円に抑えられます。予算額は今年分で約千四百万円。
授産施設で働く障害者の利用料の負担増は重大な問題です。一部に通所を控える動きも出ていました。
市では「関係者のお話を聞くなかで実態が分かった。社会参加の機会を奪ってはならないとの思いからだ」と話しています。日本共産党市議団は独自減免制度を要求してきました。
作業所利用無料に
岡山・岡山市
岡山市は障害者の「地域活動支援センター」(小規模作業所)への補助金を増額し、自己負担を無料にすることを決めました。九月議会で予算化され十月から実施されます。
「地域活動支援センターIII型」に移行する利用者十人以上の作業所は、利用者当たりの補助にくわえて年間基本額を四百万円に。利用者が五人から九人の場合も同様に補助を継続(基本額は三百万円)します。重度障害者には一・三倍の加算を新たに設けています。
現在ある市内三十五カ所の小規模作業所で、年間五十万九千円から最高二百五十二万五千円まで補助金が増額となります(利用人員昨年実績で換算)。これらの施設で「日中一時支援」などの事業もできるようになり、休日などの障害者の居場所づくりに道を開いています。
障害者の生活と権利を守る岡山県連絡協議会の吉野一正事務局長は「私たちの運動と市民の世論がみのったもの」と話しています。日本共産党市議団も議会内外で求めてきたものです。
障害児と施設に支援
愛知・大府市
愛知県大府市の九月議会に、障害者支援の予算案が提案されます。
障害者の通所施設は、日割り計算となり施設の収入が月百万円近く落ち込むといわれるなかで、市は障害者の相談事業の委託費として五施設に各百五十万円を支援します。未就学障害児の施設利用料の一割負担では、これまでの月額七千二百四十三円の負担が二万二千七百四十三円となりますが、市の予算でカバーし、利用者の負担は据え置かれます。いずれも十月から実施されます。
日本共産党の山口広文市議は、六月議会で市独自の支援策を訴え、市議団も市長への緊急要請を行っていました。
山口議員は「障害者や家族の要求が一部予算化されたもの。引き続き支援策を具体化したい」と話しています。
利用料に助成へ
岐阜・高山市
岐阜県高山市は十一日開会の市議会で、十月から本格実施される在宅障害者のサービス利用料について、全額助成を最高に、半額助成までの各種助成措置を提案することを明らかにしました。
全額助成は、就労移行支援事業(針・灸=きゅう=・マッサージ技術取得の訓練など)、移動支援事業(視覚障害者のガイドヘルプなど)、訪問入浴サービス事業など。四分の三助成(来年、再来年度は半額助成)は、居宅介護給付(ホームヘルパー派遣費用など)や児童デイサービスなどです。
小規模作業所に勤める道添健太郎さんは、「心配していたが、本当にうれしい」と語ります。
日本共産党の伊嶌明博市議は、「市の単独支援事業をつくるべきだ」と、三月と六月の議会で求めていました。党飛騨地区委員会は四日、土野守市長に対して、障害者施設利用料の自治体独自の支援策や、飛騨地域の三市一村の連携による障害者入所施設の助成など四項目の要望書を提出しました。
大分県知事
「国はけしからん」
国の障害者自立支援法による重い利用料負担にたいする県独自の軽減策を打ち出した大分県の広瀬勝貞県知事は六日、要請にきた障害者らに、「県としても負担軽減策を出したが、国もけしからん。国に要望していきたい」と答えました。
県庁を訪れたのは、県内の幅広い障害者、福祉関係者二十人が呼びかけ人となっている「困るよ!自立支援法」大分行動に参加する約五十人です。
当事者の生の声をぶつけ、自立支援法改善を求める意見書採択など制度見直しを要求しました。知事への要請は初めて。
大分市内の通所授産施設に通う此松太一さん(21)は、「しょうがいしゃじりつしえんほうで一つ一つのねがいがとられたきぶんです。お金もかかり、しせつにいけるかビクビクしている仲間がいっぱいいます」と記した手紙を手渡しました。
広瀬知事は、「耐えられない自己負担が出て利用を中止する人も出ている。十月から障害児施設の費用負担も格段に重くなる。せっかくの療育を中断してしまうのは大変なこと。みなさんを応援します」と激励しました。
参加者は、県議会初日のこの日、県議会各会派とも面会。日本共産党からは、加藤純子県議が応対。月六万円の年金で生活する障害者=佐伯市=が、「負担増で生計が赤字になった。赤字になるということは生きていけないということ。買い物も旅行もできない。国に改善を求めてください」と訴えました。加藤県議は、「みなさんの声をしっかり県、国に届けます」と、握手し応えました。