2006年9月10日(日)「しんぶん赤旗」

平和のアジア共同体をめざして

第4回アジア政党国際会議 志位委員長の発言


 ソウルで開かれているアジア政党国際会議二日目の九日、日本共産党の志位和夫委員長が行った発言(全文)は次の通りです。


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(写真)発言する志位和夫委員長=9日、ソウル

分断と敵対から、友好と平和へ――アジア大陸の歴史的転換を象徴する会議

 尊敬する議長ならびに親愛なるすべての代表のみなさん。

 私は日本共産党を代表して、第四回アジア政党国際会議の開催を歓迎し、心からの祝福と連帯の気持ちを表明します。

 この会議には、この大陸のすべての地域から、与野党を問わずほぼすべての政党が参加していますが、このような会議を開催しているのは、世界の大陸のなかでもアジア大陸だけであります。私は、この会議の開催自体が、分断と敵対から、友好と平和へという、この大陸でおこった巨大な歴史的転換を象徴するものだと考えるものです。

 この会議の足取りは、すでに歴史に刻まれています。六年前のマニラで始まり、バンコク、北京と重ねられてきたこの会議の到達点は、二年前の「北京宣言」に明記されたように、戦争、侵略、覇権に反対し、世界とアジアの平和秩序を共同して探究することにあります。私は、今回のソウルでの会議が、これまでの到達点を踏まえ、さらに前進の一ページを刻むことを強く願うものです。

東南アジアで始まった平和の流れを、北東アジアに広げ、平和のアジア共同体を

 みなさん。

 前回の会議以降の世界とアジアの情勢の進展を考えるとき、私は、世界各地で、平和な国際秩序の新たな担い手として、自主的な地域共同体の動きが発展していることに、注意をむける必要があると考えます。地域共同体の動きは、ラテンアメリカ、アフリカでもおこっていますが、平和の共同体という点では、このアジア大陸でもっとも目覚ましい前進が形づくられています。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国が、国連憲章と「バンドン宣言」を土台に、紛争の平和解決、武力行使の禁止などをうたって一九七六年にむすんだ東南アジア友好協力条約(TAC)は、ASEAN十カ国のほか、中国、韓国、日本、モンゴル、ロシア、インド、パキスタン、ニュージーランド、パプアニューギニア、オーストラリアが加入し、世界人口の53%を擁する諸国が参加する、巨大な平和な流れに発展しています。昨年十二月には、TACに加入する十六カ国が集まって、第一回「東アジア首脳会議」が開かれ、「東アジア共同体」を展望する宣言が採択されたことは、重要です。

 くわえて私は、上海協力機構(SCO)が、中国、ロシア、中央アジア諸国、南アジア諸国が参加し、ユーラシア大陸の中央部の広大な国々を擁する平和の機構として発展しつつあることにも、注目しています。

 これらのアジア各地に形成されつつある共同体は、国連憲章にもとづく平和秩序、各国の主権の尊重と内政不干渉、紛争の平和的解決、公正で民主的な国際経済秩序、異なる社会体制や文明間の対話と共存などを、共通の立場として掲げています。私は、これらの方向にこそ、アジア諸国民の平和、友好、進歩、繁栄を保障する大道があることを、強調したいと思います。

 北東アジアでは、朝鮮半島の非核化をめざす六カ国協議という枠組みがつくられ、共同して問題を解決する努力が重ねられてきましたが、さまざまな曲折や逆行もみられます。私たちは、北朝鮮が国連安保理決議を受け入れ、六カ国協議にすみやかに復帰することを、強く要求します。昨年九月の六カ国協議では、「北東アジア地域の永続的な平和と安定のための共同の努力」を確認した共同声明が採択されています。私たちは、六カ国協議という枠組みが、直面する困難を打開して核問題の解決をはかり、この地域の平和と安定のための共同の機構に発展することを、心から願うものです。

 東南アジアで始まった平和の流れを、北東アジアにも押しひろげ、中央アジア、南アジア、西アジア諸国とも連携し、平和のアジア共同体を築くために、私たちはアジアの政党の一員として力をつくす決意です。

日本がどういう役割をはたすべきか――五つの点で力をつくしたい

 みなさん。

 平和のアジア共同体を築くうえで、日本はどういう役割を果たすべきでしょうか。私たちは、日本政府が現におこなっている外交は、残念ながら、アジアの多くの人々の願いにこたえるものになっていないと考えています。私たちは、日本外交をつぎの五つの点で転換させることが必要だと考え、そのための努力をはらっています。

 第一は、日本が過去におこなった侵略戦争と植民地支配を正当化する逆流を克服することです。私たちは、首相の靖国神社参拝の一番の問題は、この行為が靖国神社の立つ侵略戦争肯定・美化という歴史観に、日本政府が公的な認知をあたえることにあるとして、その中止をもとめています。平和のアジア共同体を築くためには、過去の歴史の基本点への共通の認識が必要となります。過去の歴史の誤りを直視し、それへの反省を行動で示してこそ、日本はアジア共同体の一員としての信頼と友情をかちとることができるでしょう。日本共産党は、一九二二年の党創立当初から、天皇制政府によるきびしい弾圧に屈することなく、日本軍国主義の侵略戦争と植民地支配に命がけで反対をつらぬいた政党として、日本外交のこのゆがみをとりのぞくために力をつくすものです。

 第二は、アメリカ一辺倒でなく、日本の政府として、アジア諸国との平和の関係を探求する大戦略をもつことです。私たちは、アメリカとの関係では、現在のような従属関係でなく、もちろん対立でもなく、対等・平等の真の友好関係を確立することを目標にしています。日米安保条約を解消し、それにかえて日米友好条約をむすび、アジアでも主要な流れとなっている非同盟諸国会議に参加する―これが私たちのプログラムです。アメリカと対等・平等の友好関係を築きながら、自主独立の国づくりをはかることは、多くのアジア諸国が共通して追求している方向ではないでしょうか。

 第三は、軍事偏重でなく、外交による問題解決に徹する姿勢を確立することです。私たちは、その最大のよりどころとなるのは日本国憲法第九条だと考えています。戦争放棄と戦力保持禁止を明記した第九条は、アジア諸国民と日本国民に甚大な犠牲をもたらした侵略戦争の反省に立って、「日本は二度と戦争をしない」ことをアジア諸国民に誓った国際公約です。それは、ひとり日本国民にとっての平和の宝であるだけでなく、アジア諸国民の共有財産でもあります。この国際公約をまもりぬき、それを生かした平和外交をすすめることこそ、アジアのみなさんが日本にもとめていることではないでしょうか。

 第四は、いかなる国であれ覇権をみとめず、国連憲章にもとづく平和秩序をまもることです。また、被爆国の政府として、地球的規模での核兵器廃絶を緊急課題として追求することです。二十一世紀をむかえて、「戦争のない世界」への動きが、人類史上かつてない広がりと力づよさをもって発展しています。それは、二〇〇三年のイラク戦争にさいして、世界の圧倒的多数の国々が反対の声をあげたことにも示されました。二十一世紀は、どんな超大国でも一国の力で世界を動かせる時代ではありません。世界のすべての諸国家と諸国民が平和を築く主人公となる時代に、私たちは生きているのです。

 第五は、社会制度の異なる諸国の平和共存および異なる価値観をもった諸文明間の対話と共存の確立に力をつくすことです。アジア大陸は、社会体制という点でも、文化的・宗教的にも、多様性にとんだ大陸です。歴史的に形成されてきた社会制度、価値観、文明の違いを、敵対や干渉の口実にしてはなりません。特定の尺度で他を裁断するのでなく、多様性を相互に尊重し、相互に理解しあい、平和的な共存をめざすことこそ大切です。これは、これまでのアジア政党国際会議で確認された立場であり、ご出席のすべての参加者のみなさんの共通の願いであると確信するものです。

 みなさん。

 平和のアジア共同体を実現し、二十一世紀を「戦争のないアジア」「戦争のない世界」とするために、ともに英知を発揮し、力をあわせようではありませんか。ご清聴ありがとうございました。


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