2006年9月12日(火)「しんぶん赤旗」
主張
大企業減税
最大の「既得権益」にメスを
自民党総裁選で谷垣財務相は消費税率10%への増税を主張しています。安倍官房長官も二〇〇九年度までに消費税増税を含む「税制改革」をやるとのべ、麻生外相もいずれは消費税増税が必要だとしています。
多少の色合いの違いは見せていますが、三氏とも「税制改革」による増収策といえば「消費税しかない」とする立場で一致しています。
「消費税しかない」というのは、税制をめぐる政府・与党の議論の中でも一番のごまかしです。
行きすぎた負担軽減
財務省の調査によると、金融関係を除く企業の〇五年度の経常利益は、過去最高の五十一兆七千億円に達しています。バブル期の最高益を記録した一九八九年度と比べて十二・八兆円、三割以上の増加です。
ところが法人税収は、八九年度の十九兆円から、〇五年度の十三・三兆円へと三割も落ち込みました。利益が三割増えたのに、税収は反対に三割減るという異常事態です。
その原因は、財界の要求に従って、政府・与党が法人税の減税を繰り返してきたことにあります。
谷垣財務相は記者会見で、〇五年度の法人税収は税率30%で十三・三兆円であり、これを八九年度当時の税率40%に戻すと税収は十八兆円を超えると説明しています。税率を下げなければ税収は五兆円も多かったはずだということです。
税率引き下げ以外にも、大企業にはさまざまな税負担の軽減策が取られてきました。〇三年度からの「研究開発減税」もその一つです。
「研究開発減税」は研究費の規模が大きい大企業の法人税率を6%引き下げる効果があります。日本経団連の現・前会長の出身企業であるキヤノン、トヨタは、この措置だけで法人税率が24%に下がります。
日本を代表するトップ企業が、中小企業(税率22%)並みの負担しかしていないことになります。
大銀行も三兆円の過去最高益を上げながら、国と地方の法人課税を合わせて四百七十八億円しか払っていません。わずか1・6%の負担率です。損失を後々まで繰り越して税額から差し引ける期間の延長(〇四年度から実施)などの減税策によって、大幅に負担を減らしています。
明らかに行きすぎです。それでも、財界に応分の負担を求める当たり前の改革を口にする総裁候補は一人もいません。自民党が企業献金に頼り、企業献金の交換条件として、財界が消費税の増税と法人税の減税を要求しているからです。行きすぎた減税は、ひも付きの「財界利権」となっています。
減税しないと国際競争で負ける、というのが政府・財界の口実です。
しかし政府の調査でも日本企業の公的負担はフランスの半分、イタリアの三分の二の水準にすぎません。
大企業の国際競争力を測るバロメーターの貿易黒字は圧倒的な世界一を続けています。日本の競争力が強すぎて米国から円の切り上げ要求が絶えず出るほどです。しかも減税の大盤振る舞いで企業は百兆円規模の資金余剰を抱えています。
応分の負担を求める
大企業の負担を増やしたら国際競争に負けるというのは、「財界利権」をベールに包み、「消費税増税しかない」と信じ込ませるための世論操作にほかなりません。
低所得者ほど負担が重く、格差と貧困を拡大する消費税の増税は最悪の選択です。空前の大もうけを上げている財界・大企業の「既得権益」にメスを入れ、応分の負担を求めることこそ社会と経済の要請です。