2006年9月13日(水)「しんぶん赤旗」
主張
バグダッドへの空輸
イラク人殺りく後押しするな
航空自衛隊は七月三十一日以来、クウェートとイラク南部間に限っていた航空輸送をバグダッドにまで広げ、米軍支援を強めています。
バグダッドは激しい戦闘が続く戦場です。米軍兵員・物資の輸送にふみこんだことは、米軍の非人道的な無差別殺りくを助長する点でも、「危険を回避する」という政府説明に反する点でも許されないことです。
明白な特措法違反
米軍はイラクに十四万人が駐留し、武装勢力掃討作戦を続けています。イラクの事態は「国内、とりわけバグダッドとその周辺には内戦につながりかねない状況」(米国防総省)です。米軍の非人道的な軍事作戦が事態を悪化させている原因です。空自の輸送拡大は、この米軍作戦を大いに助長するものです。
ギャリー・ノース米中央空軍司令官は、航空輸送によって毎日二千人の兵員を戦場に「移動」させ、戦闘指揮官は「必要なものを必要なときに必要な場所で入手できる」とのべました。空輸が「戦闘を可能にしている」ともいっています。
米軍の掃討作戦の実態は、イラク民間人の無差別殺りくです。空からの攻撃で子どもや老人をはじめ住民を無差別に殺りくし、地上ではドアをぶちやぶって屋内に押し入っては強制連行するなど人権侵害の連続です。西部ハディサでは民間人二十四人を虐殺したこともあかるみにでました。米軍の兵員・物資を輸送するということは、米軍の「武装勢力掃討作戦」を続けさせる戦力補給行為となります。食料や医薬品などの輸送であっても米軍の戦闘作戦の基盤を保証するものとなります。
日本が米軍の戦闘作戦に手を貸し、イラク民間人の殺りくを手助けすべきではありません。
空自の空輸は「人道復興支援のため」という政府の説明はごまかしです。兵員・物資のバグダッド輸送にふみこんだのは、米軍の掃討作戦の支援を拡大・強化するためです。とうてい認めるわけにはいきません。
バグダッドは現に戦闘が続いており、イラク特措法上も空自が活動できない危険な地域です。
政府はバグダッドについて、航空機にたいするミサイル攻撃が「発生する可能性も排除されない」(守屋防衛事務次官)といっています。C130輸送機がバグダッド飛行場に着陸するとき「必ずしも毎回ではない」がフレアを使用していることも認めています。フレアはC130が発する熱をめがけて発射されるミサイルを避けるために放出されるおとりの熱源体です。フレアを使わなければならないほどバグダッドは危険だということを政府自身が裏付けていることになります。
イラク特措法は、活動期間内に戦闘行為が行われると認められる地域での活動を禁止しています。バグダッドはまさにそれに当たります。内戦の危険が高まり、軍事的危険が強まっているなかで活動を強行しつづけることは許されません。特措法が自衛隊員の「安全の確保に配慮」することを義務付けていることからも、空自のバグダッド輸送はもちろん、輸送支援をやめるべきです。
憲法九条の歯止め
空自のバグダッド輸送は、日本が米軍の戦闘作戦と不可分一体の関係にふみこんだことを意味します。しかし、憲法九条がある限り、武力を行使してイラク民間人を殺りくすることはできません。
自衛隊のイラク派兵をやめさせるとともに、憲法九条を守り抜く運動を大きく広げることが重要です。