2006年9月16日(土)「しんぶん赤旗」
食料自給率の低下 何が原因 ?
〈問い〉 政府は、食料自給率低下の原因を、(1)食生活の大きな変化により、国内で自給可能な米の消費量が減少する一方、国内で生産が困難な飼料穀物や油糧原料(大豆、なたね)を使用する畜産物や油脂類の消費が増えた、(2)生産が実需者のニーズなどに十分対応しきれず、生産性の向上や品質の改善を図る取り組みが不十分であった、ことにあると説明しています。共産党はどのように分析されていますか? (福島・一読者)
〈答え〉 1950年代後半からの高度成長以降、食料自給率が急速に低下した最大の原因は、アメリカのいいなりで、大企業の利益を優先させ、食料の自給政策を放棄し、外国産と競合する国内農産物を切り捨ててきた自民党政府の農政にあると考えています。
その間、食生活が変化し、多様化したのは確かですが、その大きな要素である米消費の減少は、アメリカ産小麦の市場拡大のために学校給食での米飯禁止、パン食奨励を長期にわたって押しつけてきた政府の政策が大きな影響を及ぼしたものです。
また、飼料穀物や油糧原料などの需要が増えたのも事実ですが、政府はそれに対応して本格的な増産政策をとるどころか、逆に国内生産をつぶし、輸入に依存する政策を進めました。
麦でいえば、60年以降の35年間に需要量が1・5倍に増えるなかで生産量は約5分の1に減りました。同じく大豆の作付面積も最高時の約5分の1に減少しています。「国内で生産が困難」だから自給率が低下したというのは、みずからの農政の責任を回避するための議論といわなければなりません。
生産が実需者のニーズに対応していないという指摘も、輸入原材料への依存が定着している食品産業などの要求を代弁したものです。
麦や大豆の品質や生産性が向上していないという指摘は、政府が長年にわたって国内生産を放棄してきた結果にほかなりません。
品種や技術の向上に関係者が努力するのは当然ですが、広大な農場で生産されるアメリカ産や所得水準が日本の10分の1以下の中国の農産物なみの“安い”価格や均一の品質で大量の供給を求めることはわが国の条件を無視した非現実的な要求です。それに十分に対応できないことを食の海外依存の口実にするのは、日本の国土に根ざした食料の供給に政府がまともに取り組む意思のないことの表れです。
加えて最近の自給率の低下は貿易拡大一辺倒のWTO(世界貿易機関)のもとで、「国内で生産可能な農産物」まで輸入自由化を受け入れ、米を含めて畜産、果樹、野菜などの輸入が急増して、国内生産がことごとく衰退させられた結果です。
食料自給率の回復・向上には、日本の大地に根ざした食生活の普及・改善など国民的取り組みも必要ですが、なによりも農業つぶしの農政を大もとから転換することが不可欠です。(橋)
〔2006・9・16(土)〕