2006年9月28日(木)「しんぶん赤旗」
庶民大増税 なぜなぜ問答
財源論編 16
Q “金持ち増税”はやる気を奪う?(下)
前回紹介したように、小泉内閣は二〇〇三年に、株式配当や株式譲渡所得に対する税率を大幅に引き下げました。〇七年までの五年間は、所得税7%、住民税3%、あわせて10%を納めればいいことになってしまったのです。
大幅減税
それまでは、配当は他の所得と合算して税額を計算していたので、高額所得者ならば最高税率が適用されることもありました。10%ですむというのは、大変な減税です。
銀行や郵便局の預貯金の場合は、低金利でわずかな利子でも20%の税金が課税されます。毎年何千万円もの配当を得ているような大資産家に10%しか課税されないというのは、不公平な話ではないでしょうか。
働いて三千万円稼いだ場合には九百万円くらいの税金がかかります。ところが、資産を右から左へ動かして三千万円稼いだ場合には、わずか三百万円の税金ですむ…。これが公平といえるでしょうか。
「一生懸命働くより、コンピューターにかじりついて株取引をしていた方が得だ」という風潮が広がってしまいます。これこそ、働く人の「やる気」をなくさせる税制ではないでしょうか。
実は、株取引への減税は、「金持ち減税」と評判のアメリカのブッシュ減税を真似したものでした。ところが、その本場のアメリカでさえ、配当や譲渡所得の所得税率は15%です(さらに州ごとに住民税が課税される)。日本の所得税は、アメリカの半分です。大資産家に、このような優遇をする理由はまったくありません。
多額配当
この減税で利益を得た資産家とは、どのような人たちでしょうか。一例をあげましょう。サラ金大手の武富士、アコムの両社は、〇五年度に多額の株式配当を出しています(武富士は一株二百三十円、アコムは百四十円)。両社の創業者一族が保有する株式数から配当額を計算すると、二社六人の合計で五十二億円もの配当を受け取っている計算です。これに対する減税額は、〇二年の税率と比較すると十七億円、九八年当時の税率と比較すると二十七億円にものぼります。
増税して、こうした人たちが「やる気をなくした」としても、何も困ることはありません。(つづく)
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