2006年10月4日(水)「しんぶん赤旗」
産婦人科医の不足をどう考える?
〈問い〉 全国的に産婦人科医が不足し、病院をやめて開業する医師が増えていると聞きますが、どういう状況ですか。問題解決にはどんなことが大事だと考えますか?(福島・一読者)
〈答え〉 身近で出産できないという産科医療の危機的状態が全国で広がり、「出産難民」のことばもうまれています。
産婦人科を持つ病院をみても、これまで1996年から2004年の間に26・4%も減少しています。しかも、日本産婦人科学会が06年6月に発表した資料では、分娩(ぶんべん)をとり扱っているとみられていた病院、診療所5000施設のうち、じっさいにおこなっているのは3000施設にとどまったということです。
産婦人科医の減少の理由は、(1)多忙―24時間、365日拘束される医療だということ、(2)その割に評価が低いこと、(3)訴訟リスクが高い、などがあげられています。
産科医の絶対的不足、そのための過密労働による医師の撤退という、悪循環が加速しています。とくに救急や宿直、日直などに追われる病院勤務医の負担が大きく、病院をやめて早めに開業する事態も生まれています。また産科をやめて、ほかの科に移る例もみられます。
開業医の産婦人科・産科施設の数(診療所)は厚労省の統計で出ていますが、96年の5100施設から02年の4600施設に、こちらも減少しています。しかも高齢化が急速に進んでいます。
産科医療の危機的状態を打開するため、産科医の絶対数をふやすことと、産科医をやめない待遇面での改善が急務です。
わが国の産科医療は、出生児、妊産婦の死亡率とも、60年代、70年代の10分の1になるなど、世界のトップ水準の安全性を築いてきました。出産は安全で当たり前という国民意識をつくり出し、逆に訴訟を増やす原因にもなっています。
しかし、安全は医師やスタッフの献身的努力で支えられており、ますます高度な医療体制、人員体制が求められているという現実を直視しなければなりません。不幸な事故の場合の第3者機関での原因究明体制や損害補償制度の必要性も指摘されています。
こうした産科特有の困難に、しっかり政治が応える必要があります。
同時に産科医に限らず医師不足を招いている根本には、これまで医師養成を抑えてきた政府の政策があります。医療費削減、診療報酬引き下げ、公的病院つぶしをすすめたこれまでの小泉政治が、危機をいっそう深刻にしました。こうした医療政策全体の見直しが急務です。(梅)
〔2006・10・4(水)〕