2006年10月5日(木)「しんぶん赤旗」

主張

“血の同盟”

米軍とともに戦争する議論だ


 安倍首相が研究するという「集団的自衛権の行使」がアメリカを助けるためだけの主張であることがますます明らかになっています。

 集団的自衛権はもともと日本を守るものではありません。軍事同盟国であるアメリカへの攻撃を日本が攻撃されたとみなしてアメリカを守る議論です。国会答弁で安倍首相自身、「日米同盟をより効果的に機能」させるための研究であることをくりかえしています。集団的自衛権を行使できるようにするということは、結局、日本がアメリカを助太刀してアメリカとともに血を流す道に進むことにほかなりません。

第三国との戦争に

 軍事同盟で安全を保障するという安倍首相の考えは、軍事同盟が二度の世界大戦の元凶となったという教訓を学ばない古い発想です。これでは戦争をなくし世界平和をつくりだすことなどできません。軍事同盟ではなく国際社会の協力で平和を守るのが国連憲章のしくみです。

 いまブッシュ政権は、世界のどこであっても先制攻撃戦争のできる軍事態勢をめざしています。在日米軍はその中核です。安倍首相が「日米同盟」をくりかえすのは、アメリカ単独でなく同盟国を動員して戦争をたたかうブッシュ政権に追随し、対米忠誠心を示すためです。

 もともと自衛権は、武力攻撃から日本を守るためにのみ行使できるというのが確立した政府見解です。集団的自衛権の行使とは、日本が武力攻撃を受けていないのに、アメリカが戦争状態に入ったら、日本が武力を行使し米軍を守る行為です。米軍防衛のために日本が血を流す集団的自衛権の行使など論外です。

 安倍首相は、日本が攻撃される以前の「周辺事態」で出動した艦艇を「救援しないということでいいのか」といいます。しかし、「周辺事態」はアメリカが行うアメリカの戦争です。それもイラク戦争のような国連憲章違反の先制攻撃戦争です。

 米軍の交戦相手から日本が攻撃されていないのに、米軍を守るためといって日本が武力を行使すれば、日本から第三国に戦争をしかけることにもなります。文字通り、安倍首相の集団的自衛権行使論は日米同盟を“血の同盟”にかえるものです。

 安倍首相の考えは、アメリカが求めている憲法九条の明文改定をめざしつつ、まずは解釈改憲で憲法改悪の眼目である集団的自衛権行使に道を開こうというものです。憲法九条を変えなければ不可能なことを、解釈を変えればできるかのようにいって、研究を進めるのはあまりにも強権的です。

 集団的自衛権を行使して米軍を守り米軍とともにたたかうことは、アメリカの先制攻撃戦略態勢をつよめ、一国覇権主義をあおることにもつながります。集団的自衛権行使の研究は日本と世界を脅威にさらすことは明白で、有害無益の議論といわなければなりません。

憲法九条でこそ

 安倍首相の日米軍事同盟強化論は、過去の日本の侵略戦争への反省がないだけにいっそう危険です。アメリカの侵略戦争推進の立場をさらに深めるのは明白です。

 世界、とりわけアジア諸国は、非同盟首脳会議や国連総会での発言にみられるように一国覇権主義や先制攻撃戦略への批判を強め、紛争の平和的解決を求めています。軍事同盟強化はこうしたアジア諸国民の願いにも反します。

 アメリカいいなりの軍事同盟強化ではなく、憲法九条を基本に世界平和に貢献することこそ必要です。


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